ドラベ症候群の疾患修飾薬候補zorevunersenの第III相EMPEROR試験で最初の患者さんに投与を開始
米バイオジェン社と米ストーク社は8月11日、ドラベ症候群の治療を目指す疾患修飾薬候補zorevunersenのグローバル第III相EMPEROR試験において、最初の患者さんへの投与が同日に行われたと発表しました。
zorevunersenは開発中のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)であり、ドラベ症候群に対する初の疾患修飾薬となる可能性があります。高度に差別化された作用機序により、抗けいれん薬で達成される以上に発作の頻度を減少させ、神経発達、認知、行動を改善させることを目指しています。zorevunersenは疾患修飾の可能性を示唆し、FDA(米国食品医薬品局)とEMA(欧州医薬品庁)から希少疾病用医薬品の指定を受けています。またFDAはzorevunersenを小児用希少疾病用医薬品に指定するとともに、機能獲得型と関連しないSCN1A遺伝子の変異が確認されたドラベ症候群の治療薬としてブレークスルーセラピーに指定しました。
徴とする、希少な遺伝性の発達性てんかん性脳症です。現在、この疾患の根本原因に対する承認された治療薬は存在しません。SCN1A遺伝子の1コピーの変異が原因であることが多く、脳の神経細胞におけるNaV1.1タンパク質のレベルが不十分になることで発症します。発達障害や認知障害は、知的障害、運動や平衡障害、言語および会話障害、睡眠異常、自律神経系の失調、気分障害など多岐にわたり、患者さんや介護者の生活の質を悪化させます。90%以上の患者さんは、利用可能な最善の抗けいれん薬による治療にもかかわらず発作が継続します。てんかんによる予期せぬ突然死(SUDEP)のリスクも、一般的なてんかん患者さんと比較して高いとされています。現在、世界中で、38,000人がドラベ症候群に罹患していると推定されています。
EMPEROR試験(NCT06872125)は、国際共同二重盲検・シャム対照試験であり、SCN1A遺伝子に機能獲得型変異を伴わないバリアントを有することが確認された、2歳以上18歳未満のドラベ症候群の患者さんを対象に、zorevunersenの有効性、安全性および忍容性を評価します。8週間のベースライン期間終了後、参加者は1:1の割合でzorevunersen群またはシャム群に無作為に割り付けられ、52週間にわたり投与されます。実薬投与群の患者さんには、初日および8週に70mgの負荷投与を行い、その後24週および40週に45mgの維持用量を投与します。すべての患者さんは、試験期間中に標準治療を継続します。主要評価項目は、28週における大運動性発作の頻度のベースラインからの変化率です。主な副次評価項目には、52週における大運動性発作の頻度の変化率と、Vineland-3の下位領域を用いて52週時点で評価される行動および認知機能の変化が含まれます。本試験は米国、英国、日本で開始されており、今後ヨーロッパでも実施が予定されています。試験終了後、適格基準を満たした被験者には、zorevunersenによるオープンラベル延長試験(OLE)として継続投与の機会が提供されます。
ストーク社のチーフメディカルオフィサーであるバリー・ティコ氏はプレスリリースにて、「第I/Ⅱ相試験およびオープンラベル延長試験により、zorevunersenに関する豊富なデータが得られ、投与量、治療期間、評価項目の選択および統計的検出力など、EMPEROR試験デザインの指針となりました。この疾患の重篤性と現在の治療法の限界を踏まえると、けいれん発作の大幅かつ持続的な減少および、認知および行動障害の継続的な改善はzorevunersenがドラベ症候群の患者さんの予後を改善する可能性があるという私たちの信念を裏付けるものです」と述べています。
また、バイオジェン社のセラピューティックス領域開発部門の責任者キャサリン・ドーソン氏は、「EMPEROR試験の開始は、zorevunersenの開発における重要なマイルストーンとなります。現在使用可能な抗てんかん薬による治療を受けても、この希少な遺伝性疾患の認知および行動障害の根本原因に対応できる治療薬は存在しません。Zorevunersenが承認されれば初のドラべ症候群に対する疾患修飾薬として新たな選択肢をもたらすこととなることを期待して、ストーク社と共にzorevunersenを前進させることを期待しています」と述べています。