ミリキズマブ投与の潰瘍性大腸炎とクローン病患者さんが安定した長期寛解を示す
米イーライリリー・アンド・カンパニー社は10月28日、炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)において、複数年にわたる2つの第III相試験結果を発表し、ミリキズマブの投与を受けた患者さんが安定した長期寛解を示したことを報告しました。
炎症性腸疾患は、主に潰瘍性大腸炎(指定難病97)とクローン病(指定難病96)を指し、小腸や大腸など腸管で炎症が起きる疾患です。炎症により、便意切迫感などがあり、患者さんのQOL(生活の質)を低下させ、放置すると不可逆的な合併症を招く可能性があります。
ミリキズマブは、IL-23のp19サブユニットに選択的に結合し、IL-23受容体との相互作用を阻害するヒト化抗ヒトIL23p19モノクローナル抗体製剤です。IL-23経路の過剰な活性化による炎症は、潰瘍性大腸炎とクローン病の発症機序において重要な役割を果たします。ミリキズマブは、2023年3月に日本において、2023年10月に米国食品医薬品局(FDA)より中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の成人患者を適応とする初のIL23p19拮抗薬として承認を受け、現在世界44カ国で承認を取得しています。中等症から重症の活動期クローン病の治療薬としてはFDAによる審査が進行中です。
LUCENT-3試験において、ミリキズマブを投与した中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の患者さんは、粘膜治癒として定義される組織学的および内視鏡的粘膜寛解を達成するなど、長期転帰の改善が認められました。また、ミリキズマブは、症状、臨床評価、内視鏡検査や組織学検査などの評価項目のいずれについても、最長で3年に及ぶ持続的な改善をもたらし、本結果は過去のTNF阻害薬、トファシチニブまたは他の生物学的製剤に対する治療不良歴の有無にかかわらず認められました。
LUCENT-2試験の1年時点での評価において臨床的寛解を達成した患者さんでは、その後2年間(試験全体では最長3年間)で、以下の結果が認められました。
・81%の患者さんが長期にわたる臨床的寛解を達成
・82%の患者さんが長期にわたる内視鏡的寛解を達成
・72%の患者さんに粘膜治癒がみられた
・79%の患者さんがステロイドフリーの臨床的寛解を達成
・便意切迫感の症状スコアにおいて臨床上意義のある低下の持続を示した(-4.72)
有害事象は、LUCENT-3試験でミリキズマブの投与を受けた患者さんのうち、7.4%に重篤な有害事象が認められ、5.3%が有害事象のため治療を中止しました。中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の患者さんにおける長期安全性プロファイルは、これまでのミリキズマブの安全性プロファイルと同様でした。
第Ⅱ相試験からVIVID-2長期継続試験に移行した患者さんから新たに得られたデータにより、ミリキズマブの投与を受けた中等症から重症の活動期クローン病患者は、高い割合で臨床的寛解と内視鏡的寛解を維持したことが明らかになりました。3年間の追加投与期間(試験全体では最長5年間)において以下の結果が認められました。
・96%の患者さんがクローン病活動指数(CDAI)による臨床的改善を達成
・87%がCDAIによる臨床的寛解を達成
・76%が内視鏡的改善を達成
・54%が内視鏡的寛解を達成
これらの試験結果について、mNRI法による解析も行いました。
有害事象においては、第II相試験からVIVID-2長期継続試験に移行した患者さんのうち、8.5%に重篤な有害事象が認められ、1.9%が有害事象のため治療を中止しました。中等症から重症の活動期クローン病の患者における長期安全性プロファイルは、これまでのミリキズマブの安全性プロファイルと同様でした。
イーライリリー社の自己免疫疾患開発部門のシニアバイスプレジデントであるMark Genovese医師はプレスリリースにて、「ミリキズマブは、潰瘍性大腸炎とクローン病において、数年間にわたる持続的な有効性データを示した唯一のIL23p19拮抗薬です。これは、免疫系疾患とともに生きる人々の長期寛解を可能にし、疾病の負担を軽減することを目指す私たちの取り組みの成果です」と述べています。
なお、イーライリリー社は、潰瘍性大腸炎を対象にミリキズマブとeltrekibart(好中球の炎症部位への遊走に関与するCXCR1およびCXCR2ケモカイン受容体を介するシグナル伝達に関わる7種類のリガンドに結合するヒト化モノクローナル抗体)の併用療法を検討する試験(NCT06598943)を実施。また、炎症性腸疾患の転帰改善につながる新たな治療選択肢となりうる治療薬候補として、経口小分子化合物であるα4β7インテグリン選択的阻害薬MORF-057について、潰瘍性大腸炎(NCT05611671)とクローン病(NCT06226883)を対象とする臨床試験を実施中です。