むし歯菌の表面タンパクがIgA腎症の発症に関連している可能性
岡山大学らの共同研究グループは10月22日、指定難病であるIgA腎症に関して、動物モデルを用いた研究において、むし歯菌(ミュータンスレンサ球菌)が表面に出しているタンパク質のひとつが、その発症メカニズムに関与している可能性を明らかにしたと発表しました。
IgA腎症(指定難病66)は、腎臓の糸球体に免疫グロブリンのIgAというタンパクが沈着し、血尿とタンパク尿が持続的に生じる慢性糸球体腎炎の一ひとつです。患者さんの多くは、慢性の経過をたどりますが、末期腎不全へ進行した場合は、透析や腎臓移植などの治療が必要となります。この疾患は上気道炎や扁桃炎が引き金になることがあることから、口の細菌との関連が想定されてきましたが、医科歯科連携のもとでの研究は進んでいませんでした。
今回、共同研究グループは、IgA腎症の患者さんの唾液より分離したCnmタンパクを表層に持つむし歯菌をラットの頸静脈より投与したところ、Cnmタンパクの投与のみで腎炎が発症することがわかりました。この結果から、Cnmタンパクを持つむし歯菌が口の中に存在する場合は、何らかの原因でこの菌が体内に侵入することでIgA腎症の様な腎炎を誘発する可能性があることが考えられました。
今回の研究成果より、これまで根本療法が確立されていないIgA腎症において、むし歯菌の特定の表層タンパクが関与する発症メカニズムの可能性が示されました。今後は、このタンパクによって引き起こされる病気をコントロールする方法を考えていくことで、新たな治療法を確立できるのではないかと期待されます。また、歯科領域でのアプローチでむし歯菌を減らしていくことで、患者さんの腎臓の状態が改善する可能性も想定されることから、特にIgA腎症に関しては、医科歯科連携を強化していくことが重要としています。
なお、同研究の成果は、「Communications Biology」に9月14日付で掲載されました。