脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬エブリスディ、良好な2年データを発表
ロシュ社は10月14日、2024年10月8日から12日まで開催された第29回World Muscle Society(WMS)年次総会において、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)を対象に進行中のRAINBOWFISH試験の良好な2年データを発表しました。
脊髄性筋萎縮症(指定難病3、SMA)は、脊髄の運動神経細胞の病変により、手や足などの筋肉が弱くなっていく疾患です。
RAINBOWFISH試験は、生後6週までの乳児期に、発症前から治療を開始した脊髄性筋萎縮症(SMA)小児(n=23)におけるエブリスディ(一般名:リスジプラム)の有効性と安全性を評価するものです。
同試験で用いられたエブリスディ(一般名:リスジプラム)は、5q染色体の変異により生存運動ニューロン(Survival Motor Neuron:SMN)タンパク質が欠乏することで引き起こされる脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療するために設計されたSMN2スプライシング修飾剤です。経口または経管投与で、毎日自宅での服用が可能です。
同試験において、エブリスディで治療を受けたSMN2コピー数が3以上の小児全員(n=18)が、Bayley Scales of Infant and Toddler Development Third Edition(BSID-III)とHammersmith Infant Neurological Examination 2(HINE-2)による評価で、「立つ」及び「歩く」のマイルストーンを達成し、その大半が世界保健機関(WHO)により提唱されている健康な小児発達の期間内に達成しました。2年間の治療後、SMN2コピー数が2の小児(n=5)は、全員が座ることができ、60%が独立して立ち上がりと歩行ができるようになりました。さらに、すべての小児が嚥下し、経口摂取可能となり、恒常的に人工呼吸器を必要とする小児はいませんでした。疾患修飾治療を行わない場合の自然経過では、I型脊髄性筋萎縮症(SMA)の小児は支えなしに座る・立つ・歩くことができないだけでなく、通常2歳を超えて生存することが難しいとされています。
エブリスディによる2年間の治療後、BSID-III認知スケールによる評価で、試験に参加した小児は脊髄性筋萎縮症(SMA)でない小児と同様の認知スキルを示しました。同試験は、標準化されたスケールを用いて認知機能を探索的評価項目として評価した初めての脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する臨床試験です。
発症前の早期に治療を開始した場合の転帰を評価するため、試験に参加した小児は生後6週まで(初回投与時の年齢中央値は25日)にエブリスディによる治療を開始。同試験では、各小児のSMN2遺伝子のコピー数別に、治療に対する転帰を解析しました。一般的に、SMN2遺伝子のコピー数が少ないほど、より重度の脊髄性筋萎縮症(SMA)と関連しています。
死亡例や投与中止または試験からの脱落に至った有害事象はありませんでした。最も一般的な有害事象は、歯が生える、胃腸炎、下痢、湿疹、発熱でした。2年解析時点で見られた有害事象は、エブリスディの脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する他の試験で見られたものと概ね同様であり、脊髄性筋萎縮症(SMA)の基礎疾患よりも年齢を反映したものでした。エブリスディに関連しない有害事象が多く、時間とともに回復しました。