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パーキンソン病の認知機能低下、前脳基底部とそれ以外の脳領域との相互作用で起こる

京都大学の研究グループは9月20日、パーキンソン病患者さんにおいて、前脳基底部の灰白質容積減少と言語性記憶障害が関連すること、前脳基底部の灰白質容積減少と内側側頭葉領域の灰白質容積減少が相関すること、内側側頭葉領域の中でも海馬の灰白質容積減少が前脳基底部の灰白質容積減少と言語性記憶障害の相関を媒介していることが示されたと発表しました。

パーキンソン病(指定難病6)は、脳の異常により、振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)などの症状が現れる疾患です。パーキンソン病は、MRI 構造画像の前脳基底部の灰白質容積を用いて認知機能低下を予測することが可能であることが知られていますが、前脳基底部がそれ以外の脳領域とどのように相互作用して認知機能低下を引き起こすのかは不明でした。

今回、研究グループは、京都大学のパーキンソン病のコホート研究のデータを利用。パーキンソン病患者さんにおいて、前脳基底部の灰白質容積減少と関連する脳領域を調べ、その脳領域が、前脳基底部と認知機能障害との関係性にどのように影響を与えているかを調べました。

パーキンソン病患者さん 137 人を対象に、認知機能テスト、頭部磁気共鳴画像法(MRI)、イオフルパン単一光子放射断層撮影法を用いて評価をしました。画像解析手法のひとつであるボクセルベースの形態計測を用いて、前脳基底部の灰白質容積減少と相関する脳変性領域を調べました。次に、前脳基底部の灰白質容積減少と関連する認知機能障害を、偏相関解析を用いて調べました。最後に前脳基底部の灰白質容積減少と認知機能障害の関係性に、前脳基底部の灰白質容積減少と相関する脳変性領域が影響を与えているか、媒介分析を用いて検討しました。

画像はリリースより

ボクセルベースの形態計測を用いた調査の結果、前脳基底部の灰白質容積減少は、内側側頭葉の灰白質容積減少と相関していたことがわかりました。また、偏相関解析では、前脳基底部の灰白質容積減少が言語記憶障害と関連することが示されました。さらに、媒介分析によって、海馬の灰白質容積減少が前脳基底部の灰白質容積減少と言語性記憶障害の関係を媒介していることがわかりました。

以上の研究成果より、前脳基底部がそれ以外の脳領域と相互作用して認知機能低下を引き起こしていることが示されました。このことは、パーキンソン病の認知機能低下において、多角的な視点を持つことが必要であることを示す結果であり、今後のパーキンソン病の認知症研究に役立つと考えられるといいます。

なお、同研究の成果は、国際学術誌「Parkinsonism and Related Disorders」オンライン版に9月9日付で掲載されました。

出典
京都大学 プレスリリース

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