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脊髄運動ニューロンに特異的に発現するQuaking5を発見、運動ニューロン疾患の病態解明と新たな治療法開発に期待

新潟大学と慶應義塾大学は9月4日、武田薬品工業株式会社、新潟大学脳研究所との共同研究により、脊髄運動ニューロンに特異的に発現する唯一のRNA結合蛋白質(RBP)として、Quaking5を同定したと発表しました。さらには、Qki5がRNA制御を介して、運動ニューロンの分子的な特性の獲得や細胞機能を制御し、ストレスに対しては保護的に働く分子機構が存在することを明らかにしました。

運動ニューロン疾患は、運動ニューロンが選択的かつ進行性に変性し、脱落する病気の総称です。上位・下位ともに障害される筋萎縮性側索硬化症(ALS)、下位のみ障害される脊髄性筋萎縮症、上位のみ障害される原発性側索硬化症などがあります。

これまで、運動ニューロン疾患の原因分子または病態関連分子として、様々なRNA結合蛋白質が同定されていますが、なぜ運動ニューロンが選択的に変性し、脱落するのかという根本的な疑問に関しては解明されておらず、根治的な治療法の確立には至っていません。

今回、共同研究グループは、脊髄に存在する多くのニューロンの中で、運動ニューロンに特異的にQki5が発現し、機能していることを突き止めました。さらに、Qki5が運動ニューロン特異的な選択的スプライシング制御をしていること、ストレス応答分子機構に対して抑制的に働くことにより、運動ニューロンの保護的な役割を果たしていることを発見しました。

以上の研究成果より、運動ニューロン特異的RBPとしてQki5の選択的スプライシング制御を介した、運動ニューロンの新たな機能を発見しました。Qki5の機能欠損により、核内および細胞質でどのような病態が惹起されているのか、さらに深くその分子機構を解析することで、運動ニューロン疾患の病態像の全体に迫ることができます。また、今後の課題として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む運動ニューロン疾患にQKI5の異常が関与しているかどうかも重要です。Qki5の標的RNAを操作することで、運動ニューロンの脆弱性を回避するような分子機構の活性化により、神経変性疾患の治療法の新たな分子標的を提供するものと期待されます。

なお、同研究の成果は、国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America [PNAS]」オンライン版に9月3日付で掲載されました。

出典
新潟大学 プレスリリース

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