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全身性エリテマトーデス(SLE)の重症化機構を初解明、ループス腎炎の新たな治療法の開発に繋がる可能性

札幌医科大学は8月19日、独シャリテ大学、同マックスデュルブリックセンター、ドイツリウマチセンターとの国際共同研究により、ループス腎炎における臓器炎症の重症化に自然リンパ球(ILC)が関与していることを世界で初めて明らかにしたと発表しました。

全身性エリテマトーデス(指定難病49)は、20~40代の女性に多く、全身症状、皮膚症状、内臓臓器の症状が見られる自己免疫疾患です。ループス腎炎と呼ばれる全身性エリテマトーデス(SLE)による腎障害は、全身性エリテマトーデス(SLE)の予後を規定する重篤な臓器病変のひとつとされています。

全身性エリテマトーデス(SLE)患者さんの多くが、ループス腎炎を発症しますが、重症度には個人差があり、ほとんど治療を要さない軽症例から透析や腎移植を要する末期腎不全を起こすループス腎炎まで幅広いことが知られています。これまで、この差のメカニズムは解明されていませんでした。ループス腎炎の発症には抗DNA抗体をはじめとする自己抗体の産生が重要とされ、それが臓器障害を起こしているとされていることから、臓器炎症の重症化も主に獲得免疫が担っていると考えられてきました。

ILCは免疫担当細胞の一種ですが、循環血液中に占める割合は極めて少なく、腸管や皮膚などの病原体の侵入にかかわる組織・臓器に特徴的に存在することが知られています。腸管などでは臓器炎症誘発においてILCが重要な役割を果たしていることがわかっていましたが、これまで腎炎とILCの関わりについては検討されていませんでした。

今回、研究グループは、ILCがループス腎炎の臓器炎症にどのようにかかわるのかを検討。その結果、ループス腎炎モデルにおいて、腎組織内でILCのうち、主にILC1が増加することが判明。抗IFNAR1抗体、抗アシアロGM1抗体、抗NKp46抗体によって、腎組織内ILCの増加が抑制され、腎機能障害が改善しましたが、この介入では自己抗体産生(抗DNA抗体の産生量)に変化は生じなかったといいます。

また、シングルセル解析(個々の細胞のレベルにおいてRNAの網羅的解析を行う実験手法)により、腎組織内のILCの中にNKp46の刺激を受けて活性化し、GM-CSFを特徴的に産生する集団を同定。抗NKp46抗体、抗GM-CSF抗体、抗CSF1R抗体の投与およびNcr1ノックアウトにより腎組織内の単球由来炎症性マクロファージが減少すること、腎炎による腎障害が抑制されることが示されました。

さらに、シングルセル解析の結果からは、ループス腎炎モデルにおいてTrem2陽性マクロファージが特徴的に増加している一方で、Trem2ノックアウトでは腎炎による腎障害を悪化させました。加えて、既報のヒトループス腎炎のシングルセル解析においてILCが存在するかどうかを再解析したところ、ILCはヒトループス腎炎でも存在することが示されました。

なお、同研究の成果は、国際科学誌「Nature」オンライン版に8月13日付で掲載されました。

出典
札幌医科大学 プレスリリース

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