脊椎骨端骨幹端異形成症2型の病態形成メカニズムとKIF22の機能が明らかに
九州歯科大学の研究グループは8月1日、脊椎骨端骨幹端異形成症2型(SEMDJL2)の病態形成メカニズムならびにKIF22の機能を明らかにしたと発表しました。
脊椎骨端骨幹端異形成症2型(SEMDJL2)は、低身長、四肢の低成長、顎顔面の形態異常、脱臼しやすい関節などの症状が現れる疾患です。脊椎骨端骨幹端異形成症2型(SEMDJL2)患者さんではキネシンファミリータンパク質、KIF22遺伝子の変異を認めることからKIF22の機能が病態に関わるのではないかと考えられていましたが、これまでその関連は解明されていませんでした。
今回、研究グループは、KIF22の機能を喪失した遺伝子変異モデルマウスを作製し解析を行いました。その結果、KIF22変異マウスでは脛骨の成長板の厚さおよび骨全体の長さが短くなっていることが明らかになりました。
そこで、KIF22変異マウスから軟骨細胞を採取し解析しました。その結果、KIF22変異マウス由来の軟骨細胞では、細胞分裂する際に出現する紡錘体がうまく形成されないことがわかりました。紡錘体がうまく形成されないことから、KIF22変異マウス由来の軟骨細胞の増殖スピードは遺伝子変異がないマウス由来の軟骨細胞に比べ遅くなっていました。
また、軟骨細胞の前駆細胞株ATDC5細胞に、脊椎骨端骨幹端異形成症2型(SEMDJL2)患者さんと同じKIF22の遺伝子変異を導入すると、やはり紡錘体の形成が起こらず細胞増殖が遅くなることがわかりました。
以上の研究成果より、脊椎骨端骨幹端異形成症2型(SEMDJL2)患者さんは、KIF22の遺伝子が変異し軟骨細胞の分裂に必須の構造である紡錘体が正常に形成されないため、細胞分裂が遅くなり、結果として骨の伸長が妨げられることが考えられました。
KIF22は軟骨細胞に多く発現しており、増殖を制御することから軟骨をターゲットとした再生医療への展開が期待されるといいます。
なお、同研究の成果は、「iScience 誌」オンライン版に7月19日付で掲載されました。