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炎症性腸疾患(IBD)患者さんの治療と仕事の両立を目指し職場での理解や支援を求める ~ヤンセンファーマ 「世界IBDデー」メディアセミナー~

ヤンセンファーマ株式会社は、5月14日、メディアセミナーを開催。 同セミナーには、北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター(IBDセンター)センター長 小林 拓先生、NPO法人IBDネットワーク 就労特任理事 仲島 雄大さん、ヤンセンファーマ株式会社 メディカルアフェアーズ本部 村﨑 仁美さんが登壇しました。

炎症性腸疾患(IBD)は、消化管(小腸や大腸など)に炎症が起こる疾患で、原因がわからないものを「非特異性炎症性腸疾患」といい、クローン病(指定難病96)や潰瘍性大腸炎(指定難病97)が含まれます。両疾患は、継続的な治療や日常のケアで良い状態を維持することが目指せるようになってきました。また、患者数が急激に増えているのが特徴です。

はたらき盛りに多い炎症性腸疾患

炎症性腸疾患は30~40歳代のはたらく世代に多く、就職から定年まで病気を抱えて過ごす患者さんも少なくありません。患者さんが、病気を抱えながら働き続けるためには、短時間勤務等で身体的負担を少なくする、通院や業務調整などへの理解・配慮等、治療を継続できる職場環境を整えることが大事です。

「炎症性腸疾患は、適切な治療によって寛解を維持でき仕事や生活において、特に制限が必要な疾患ではありません。『通院ができる』などの環境づくりのサポートをお願いします」(小林先生)

難病と就労の両立には「会社側との対話が必要」

この疾患は、内部障害であり、外見からわからない自己免疫疾患なので、健常者とみられてしまい、罹患者は多いけれど(難病)に対しての理解がすすまない現状があります。仲島さんは「どのような(合理的)配慮が必要なのかわからない企業が多い」と語ります。

また、「IBDといっても、個々人でそれぞれ症状が違うので、会社側(上司や同僚)との対話を通し、合理的配慮やサポートを得ることが必要です。そして当事者は、合理的配慮が当然だという気持ちを持たずに『感謝』することが、仕事をスムーズに進めるキーとなります。また、職場で自分の居場所を作ることが大事です」と仲島さん。

患者会は、就労に苦労している若者たちのよりどころになり、同じ疾患だから分かり合える存在となって、一緒に「自分が自分らしくいられる職場」になるようサポートするといいます。

就職・転職活動中、半数以上が「苦労」と回答

ヤンセンの村﨑さんは、同社が実施したアンケート結果を発表。就職・転職活動中にIBDを発症していた127人のうち、半数以上(55.9%)が、「苦労・困ったことがある」と回答。また、職場に病気のことを伝えるべきか悩んだ方が約半分も。

自分らしく働くために必要なことは、周囲(職場、社会全体)の理解や行政の支援、そしてIBD患者さん自身が自分の声で上司等と話せることが大切と村﨑さんは締めくくっていました。

質疑応答

同セミナーでは、質疑応答も実施されました。概要は以下の通り。

Q:IBDの患者数が増えている理由は?

小林先生: 食生活の欧米化、行き過ぎた衛生環境、抗生物質の使用過多などによる腸内細菌叢の変化や社会生活のストレスなどが原因と言われています。

Q:企業の規模により患者さんの理解に違いがあるか?

仲島さん:中くらいの規模の企業までは理解し、採用してみようという気になるが、2~3人の小規模な企業では一人休まれると業務が回らなくなるので就労に結び付かない。理解はするが、難病と聞くと躊躇してしまう企業が多い。

Q:職場の理解で大切な事

仲島さん: 両者で情報を共有し、お互い努力して歩み寄ることが大切。

Q:状態の良いIBDの患者さんが一番気にしていることは?

小林先生: 寛解状態のIBD患者さんが一番気にしていることは、いつ再燃するかわからない不安。そのため、食事だけでなく様々な事に気を使って生活している。

仲島さん: 患者当事者としては、再燃が一番心配で、主治医にデータ的に大丈夫と言われても調子が悪いと感じることがある。日々の活動記録を取ってどのようなときに調子が良く、どのようなときに再燃したのかなど、記録を取っているとわかるようになる。

Q:難病法の運用がこうあってほしいなという要望はありますか?

小林先生: 難病法で医療費助成が受けられ、高額な医療も助成が受けられ守られている点は評価できる。半面、難病という修飾語、そのイメージが社会生活を行う上での患者さんの重荷になっている。

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