発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)治療薬ピアスカイ、日本国内での販売を開始
中外製薬株式会社は5月22日、3月26日に製造販売承認を取得したpH依存的結合性ヒト化抗補体(C5)モノクローナル抗体「ピアスカイ注340mg〔一般名:クロバリマブ(遺伝子組換え)点滴静注・皮下注〕」について、発作性夜間ヘモグロビン尿症を効能又は効果として薬価収載され、販売を開始したと発表しました。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(指定難病62)は、造血幹細胞にPIG-A遺伝子に後天的に変異が生じることにより発症します。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持ち、症状は患者さんにより異なります。また、慢性腎臓病、肺高血圧症などを合併する場合もあります。
ピアスカイは、中外製薬のリサイクリング抗体技術を用いた抗補体C5リサイクリング抗体。一般的な抗体では、抗原に一回しか結合することができないのに対し、ピアスカイは繰り返し抗原に結合するよう改変することで、低用量での補体阻害が可能となり、4週ごとの皮下投与を実現しています。
今回の承認はC5阻害剤による治療歴のない発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者さんを対象としたCOMMODORE2試験、および既存のC5阻害剤からピアスカイに切替えた発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者さんを対象としたCOMMODORE1試験等の成績に基づくものです。同試験はいずれも日本も参加しています。
中外製薬の代表取締役社長CEO奥田修氏はプレスリリースにて、「発作性夜間ヘモグロビン尿症の新規治療薬としてピアスカイを発売できることを大変嬉しく思います。発作性夜間ヘモグロビン尿症の標準治療である抗補体C5抗体において、皮下投与可能な薬剤はピアスカイが国内初です。投与時間の短縮を通じ、患者さんや介護者の負担軽減とQOLの改善に寄与することを期待しています」と語るとともに、「今回の発売により、自社創製の抗体医薬品としては5つ目の国内上市となりました。本剤の発売としては日本が1カ国目となり、欧米でも承認に向けた審査が進行中です。当社の技術ドリブンな創薬戦略により、様々な疾患の影響を受ける患者さんに新たな価値を継続的に提供していけるよう、研究開発を一層推進してまいります」と述べています。
なお、リサイクリング抗体技術を適用した治療薬の承認は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に対する治療薬であるエンスプリング(一般名:サトラリズマブ(遺伝子組換え))に続き2剤目です。