未発症の脊髄性筋萎縮症に対する適応拡大および生後2カ月未満の患者さんに対するエブリスディの用法及び用量追加の承認を申請
中外製薬株式会社は2月15日、脊髄性筋萎縮症治療薬「エブリスディドライシロップ60mg」(一般名:リスジプラム、以下エブリスディ)について、未発症の脊髄性筋萎縮症(SMA:spinal muscular atrophy)に対する適応拡大、および生後2カ月未満の患者に対する用法及び用量追加の承認申請を厚生労働省に対して行ったと発表しました。
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下が起こる疾患です。発症前に運動ニューロンの脱落が始まるといわれています。脊髄性筋萎縮症(SMA)の原因遺伝子はSMN(survival motor neuron)遺伝子であり、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないことが発症の要因です。新生児スクリーニングを受けることで早期診断につながり、早期治療を開始することで、高い治療効果を得られる可能性があります。
エブリスディは、SMN(survival motor neuron)タンパクの欠損につながる5番染色体の変異によって引き起こされる、脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療するためにデザインされたSMN2スプライシング修飾剤です。診断後すぐエブリスディによる治療が開始可能になることで、高いメディカルバリューを提供することが期待できるといいます。
今回の承認申請は未発症の脊髄性筋萎縮症(SMA)乳児を対象にエブリスディの有効性、安全性、薬物動態及び薬力学を評価した海外第II相臨床試験(日本を含まない)であるRAINBOWFISH試験の成績に基づいたものです。一般的に、SMN2遺伝子のコピー数は少ないほど重症となり、RAINBOWFISH試験には、遺伝学的に脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断され症状が発現していないSMN2遺伝子のコピー数が2以上の乳児(初回投与時点で生後6週間以内)が参加しました。
その結果、RAINBOWFISH試験は主要評価項目を達成し、主要有効性解析対象集団において、BSID-III(Bayley Scales of Infant and Toddler Development – Third Edition)の粗大運動スケールで評価した投与開始12カ月時点で支えなしで5秒以上座位が保持できる乳児の割合が80%でした。外部刺激に対する筋肉の反応を測定するCMAPの振幅は、振幅が小さいほど脊髄性筋萎縮症(SMA)の発症および運動機能低下がみられます。また、今回試験に登録された26名の乳児のうち、試験開始時にCMAP振幅が低値(1.5mV未満)であったすべての乳児を含む81%の乳児が支えなしで30秒間座位を保持でき、多くは立位の維持や歩行が可能でした。
有害事象においては、SMAに関連する事象よりも乳児特有の事象が多く見られ、エブリスディと関連する有害事象は脊髄性筋萎縮症(SMA)を対象とした他のエブリスディの試験で認められたものと概ね同様でした。
中外製薬株式会社の代表取締役社長CEOの奥田修氏は「SMAは症状が現れる前に治療を開始することで治療効果を最大化できる可能性があり、未発症SMAへの適応拡大申請には大きな意義があります。また、年齢問わず生後間もない乳児から本剤をお使いいただけるようになることで、診断後速やかに治療を開始できる可能性があります。SMAに対して承認されている唯一の経口薬であるエブリスディをお役立ていただけるよう、承認取得に向けて引き続き尽力してまいります」と述べています。
なお、エブリスディ剤は「脊髄性筋委縮症」に対して、2019年3月に厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けており、今回の適応拡大申請についても優先審査の対象となります。