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レット症候群の原因因子「MeCP2」による神経幹細胞の分化制御メカニズムが判明

九州大学は5月19日、神経発達障害レット症候群の原因因子「methyl-CpG binding protein 2(MeCP2)」がマイクロRNA(miRNA)を介して神経幹細胞の分化を制御していることを発見し、そのメカニズムを明らかにしたと発表しました。

この研究は同大大学院医学研究院の中嶋秀行助教、中島欽一教授ら研究グループによるもので、成果は国際学術雑誌「Cell Reports」に5月18日付で掲載されました。

レット症候群は自閉症やてんかん、失調性歩行、特有の常同運動を主徴とする進行性の神経発達障害。MeCP2という遺伝子の変異によって発症することが判明していますが、その発症機序の詳細はこれまで不明でした。

今回、研究グループは脳の発生過程でMeCP2が神経幹細胞のニューロンへの分化を促進し、通常はニューロンの機能を支持するアストロサイトへの分化は抑制していることを解明。その具体的なメカニズムを調べたところ、MeCP2はmiRNA のひとつであるmiR-199aを介して脳の発達に重要な骨形成因子(BMP)シグナルを抑制し、神経幹細胞の分化を制御していることが明らかになりました。

画像はリリースより

さらに、MeCP2遺伝子に変異をもつレット症候群患者さんに由来するiPS細胞から作製した脳オルガノイド(試験管内など生体外で3次元的につくられた臓器)では、BMPシグナルの亢進とアストロサイトへの分化増加がみられ、これらがBMPシグナル阻害薬によって改善することが判明しました。

これらの結果は、レット症候群の患者さんの脳では、神経幹細胞からニューロンやアストロサイトへの分化バランスが上手く制御されていない可能性を示唆しており、そのバランスを正常化することがレット症候群の新しい治療法開発へとつながるのではないかと期待されます。

出典元
九州大学 ニュース

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