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筋萎縮性側索硬化症と前頭側頭型認知症の原因となるタンパク質TDP-43の異常凝集のメカニズムを解明、新規治療薬開発へ期待

近畿大学は2月5日、京都府立医科大学との共同研究により、神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭型認知症(FTD)の原因となるタンパク質TDP-43の異常凝集が、細胞内の物質輸送の障害により引き起こされることを明らかにし、さらに、細胞内の物質輸送の障害が筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)を悪化させることを、疾患モデル動物を用いて証明したと発表しました。

画像はリリースより

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手・足・のどの筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々に衰えていく神経疾患です。また、前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉や側頭葉が委縮して人格変化や行動障害、言語障害が現れる、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の次に多い変性性認知症です。これらの神経難病は、まだ原因が十分に解明されておらず、根本的な治療法も開発されていません。

近年、ほぼすべての筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんと半数程度の前頭側頭型認知症(FTD)患者さんにおいて、TDP-43というタンパク質が神経細胞内で異常に凝集・蓄積することが明らかとなりました。そこで、TDP-43が神経細胞内で異常凝集・蓄積することにより、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)が引き起こされるのではないかと考えられていますが、TDP-43が異常凝集・蓄積するメカニズムは、ほとんど分かっていません。

今回、研究グループは、TDP-43が他の神経難病であるペリー症候群の発症メカニズムから、微小管モータータンパク質の異常がTDP-43の異常凝集や蓄積を引き起こすきっかけになっていると仮説を立て、そのメカニズムを明らかにするため、疾患モデル細胞とモデルショウジョウバエを用いて、実験を行いました。

その結果、細胞内の物質輸送に重要な働きをする微小管モータータンパク質の機能が低下すると、TDP-43の細胞内挙動が異常となって、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭型認知症(FTD)患者さんで見られるようなTDP-43の異常凝集が引き起こされ、神経変性が悪化することが分かりました。

画像はリリースより
画像はリリースより

今後は、モータータンパク質の異常や細胞内物質の障害が、広く筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)発症や進行に関与するのか、どのようにしてTDP-43の凝集を引き起こすのかについて、まだまだ不明な点が多く、さらなる詳細な解析が必要ですが、今回の研究により、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)に対する、細胞内の物質輸送、特に微小管を介した輸送を標的とした新たな治療薬の開発が期待できるといいます。

同研究の研究代表者である永井義隆氏は「ALSやFTDだけでなく、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患において、さまざまな原因タンパク質が明らかになっています。最近、これらの原因タンパク質を標的とした医薬品の研究が進んでいますが、さらなる治療開発のためにはタンパク質が異常凝集を引き起こすメカニズムを詳細に解き明かす必要があります。今回の研究は、ほとんどのALS患者と半数程度のFTD患者の原因となるTDP-43凝集のメカニズムを解明し、新たな治療戦略を展開するうえで重要な発見になると期待しています」と述べています。

なお、同研究の成果は、神経病理学領域の国際的な学術誌「Acta Neuropathologica Communications」オンライン版に2月5日付で公開されました。

出典
近畿大学 プレスリリース

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