X連鎖性ミオチュブラーミオパチーに対する遺伝子治療薬AT132の人工呼吸器への依存および運動機能の改善と安全性に関するデータが医学専門誌に掲載
アステラス製薬株式会社は11月16日、X連鎖性ミオチュブラーミオパチー(XLMTM)患者を対象とした遺伝子治療薬resamirigene bilparvovec(AT132)の有効性と安全性を評価する臨床試験(ASPIRO試験)の、2022年2月28日時点における予備的なデータ解析を、医学専門誌のThe Lancet Neurologyで発表したと報告しました。
X連鎖性ミオチュブラーミオパチー(XLMTM)は、新生児男子に発症することがほとんどであり、骨格筋細胞の正常な発達、成熟および機能に必要なタンパク質であるミオチュブラリンの欠損または機能不全をもたらすMTM1遺伝子変異によって引き起こされることにより、重度の筋力低下と呼吸障害が現れる重篤で致死的な神経筋疾患です。
AT132は、MTM1遺伝子の機能コピーを有するAAV8ベクターです。一度の静脈内投与により標的とする骨格筋にAAV8を送り込み、その標的組織においてミオチュブラリン発現を増加させることにより、患者さんの転帰を有意に改善させることが期待されています。
ASPIRO試験(NCT03199469)は、5歳未満のX連鎖性ミオチュブラーミオパチー(XLMTM)患児を対象に、AT132の安全性および予備的有効性を評価する国際共同試験です。主要評価項目として、安全性と有効性、副次評価項目として、疾患の負担や健康に関連する生活の質(Quality of Life)、ならびに筋組織学的およびバイオマーカーによる評価が含まれます。
今回、発表された予備的なデータ解析は、2022年2月28日時点で、AT132を低用量もしくは高用量で単回注射を受けた2つの投与群と、対照群として試験に組み入れられたものの投与されなかった2人の患者さん、および自然経過研究から12人の患者さんを対象として、検証しました。同試験においてAT132が投与されたX連鎖性ミオチュブラーミオパチー(XLMTM)患者さん24人のデータが含まれています。
その結果、ベースラインではすべての被験者が人工呼吸器を使用しており、3人が30秒間自立して座ることが可能でしたが、これ以上の運動マイルストーンを達成した被験者はいませんでした。ベースラインからの平均人工呼吸器サポート時間は対照群と比較して、投与後24週までに低用量群では推定77.7%、高用量群では、推定22.8%減少しました。
データ解析時点で、AT132を投与された24人の男子のうち、低用量群6人、高用量群10人の計16人が人工呼吸器を外すことに成功しました。さらに、低用量群の5人、高用量群の3人は自立歩行が可能になり、他にもいくつかの主要な運動マイルストーンを治療後に達成しました。
一方、AT132が投与されなかった参加者14人のうち、人工呼吸器を外すことに成功した患者さんはいませんでしたが、48週までに5人が30秒間自立して座ることが可能になりました。その他の運動マイルストーンは達成しませんでした。
安全性として、高用量群では3人、低用量群では1人が死亡し、すべての被験者において、肝臓および肝胆道の重篤な有害事象が観察されました。
今回の予備的なデータは、組換えAAV遺伝子治療によるミオチュブラリン置換の有効性を示唆するものです。
なお、AT132プログラムおよびASPIRO試験は現在臨床試験差し止め中です。同試験の結果は、Lancet Neurology誌オンライン版に、11月15日付で掲載され、冊子版2023年12月号に掲載予定です。