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直接経口抗凝固薬エドキサバン、慢性血栓塞栓性肺高血圧症を対象とした医師主導治験にて有効性・安全性を確認

九州大学は11月14日、本邦発の新規経口抗凝固薬であるエドキサバン(商品名:リクシアナ、以下エドキサバン)を慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対して適応拡大することを目的とし、2021年1月より「慢性血栓塞栓性肺高血圧症を対象としたエドキサバンの有効性及び安全性を検証するワルファリン対照、多施設共同ランダム化比較試験第Ⅲ相医師主導治験 KABUKI trial」を開始、その結果、肺⾼⾎圧症の進展抑制において、エドキサバンのワルファリンに対する⾮劣性が証明され、安全性についても臨床上問題がないことが確認されたと発表しました。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、3ヶ月以上の抗凝固療法を行っても溶解できない血栓により、肺動脈が慢性的に閉塞し、肺高血圧症と右心不全を呈する疾患です。症状は、労作時の息切れや胸の苦しさ、動悸、むくみなどが現れます。国内に約5,000人の患者さんがいるといわれています。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の基本的かつ重要な治療法は抗凝固療法であり、現在のガイドラインではワルファリンのみが推奨されています。しかし、ワルファリンはビタミンKの阻害により⾎液を固まりにくくするため食事制限や頻回な採血が必要です。これらのデメリットを克服した直接経⼝抗凝固薬(DOAC)によるエビデンスは確立されていませんでした。

今回の医師主導治験は、ワルファリンを内服中の慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者さんを対象に、エドキサバン内服群またはワルファリン内服群に振り分け、1年後の肺血管抵抗の変化や、経過中の出血や血栓症の発症などを観察しました。全国から九州大学病院、杏林大学医学部附属病院、東邦大学医療センター大橋病院、東北大学病院、神戸大学医学部附属病院、名古屋大学医学部附属病院、東京大学医学部附属病院、千葉大学医学部附属病院、国際医療福祉大学三田病院、東京医科大学病院、北海道大学病院の11の医療機関が参加しました。

画像はリリースより

その結果、エドキサバンを内服した患者さんの1年後の肺血管抵抗は、ワルファリンを内服した患者さんと比べて悪化はなく、大出血や血栓症の発生も、2つの薬剤間で差は認めませんでした。

画像はリリースより

以上の研究成果より、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者さんに対するエドキサバンの有効性が検証され、安全性についても臨床上問題がないことが確認されました。

今後、第一三共株式会社より、エドキサバンの適応症として慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)を追加するための承認申請が行われる予定だそうです。

九州⼤学病院治験責任医師である細川和也助教は「CTEPH患者は全国に5000⼈いらっしゃいますが、徐々に増加傾向にあります。特に抗凝固療法は⽣涯にわたり必要となる最も重要な治療薬ですので、既に利⽤できている⾮弁膜症性⼼房細動や静脈⾎栓塞栓症と同様にCTEPHでも今後エドキサバンが安全・安⼼に利⽤できるようになることをうれしく思います」と述べています。

なお、同研究の成果は、2023年11月13日の米国心臓病協会(AHA)総会での口頭発表されました。また、循環器領域で最も権威のあるCirculation誌に、11月14日付で掲載されました。

出典
九州大学 プレスリリース

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