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ALSの早期病態において重要なTDP-43病理のメカニズムの一端が明らかに

名古屋大学と愛知医科大学の研究グループは8月6日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症に関わるメカニズムとして、TDP-43タンパク質の生理的な二量体化・多量体化が障害されて単量体化することが一因となっていることを解明したと発表しました。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手足・のど・舌などの筋肉が徐々にやせ細り、力がなくなっていく進行性の神経変性疾患です。発症から2~5年で死亡する最も重篤な神経変性疾患の1つで、明確な治療法も確立されていないため、早期の病態解明や治療法開発が望まれています。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんの脳や脊髄では「TDP-43病理」と呼ばれる変化が見られます。TDP-43病理とは、正常な運動ニューロン(運動をつかさどる神経)の、核内に存在するTDP-43というタンパク質が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんの運動ニューロンでは、核外の細胞質に脱出して異常にリン酸化された凝集体を形成している状態のことを指します。また、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)においてもTDP-43遺伝子変異が原因と言われています。しかしながら、現在まで、このメカニズムは解明されていません。

タンパク質には2つ以上の分子が結合する二量体や多量体を形成するものがあります。今回、研究グループは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんの病変組織でTDP-43の二量体化・多量体化を2つの方法で評価しました。その結果、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんの脳組織および脊髄組織ではTDP-43の二量体化・多量体化が低下して単量体化していることを発見しました。

また、神経系培養細胞やiPS細胞由来の運動ニューロンに遺伝子を導入し、TDP-43の単量体化を誘発すると、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんと同様の病態を再現することが確認できました。

最後に、研究グループは、TDP-43の二量体化・多量体化を簡便・迅速に定量評価できる測定技術「TDP-DiLuc」を開発して、筋萎縮性側索硬化症(ALS)病態の早期に、TDP-43の単量体化が起きていると見出しました。

名古屋大学はプレスリリースにて「本研究により、TDP-43の単量体化がALSの早期病態において重要な役割を果たしていることが明らかになりました。これまでTDP-43病理の上流メカニズムはほとんど未解明でしたが、TDP-43の単量体化に着目することで、将来的にALSにおける早期病態解明、早期バイオマーカーの発見につながることが期待されます。また、今回開発したTDP-DiLucを薬剤スクリーニングに応用することで、ALSの創薬研究につなげていきたいと考えています」と今後の展望について述べています。

なお、同研究の成果は、米国科学誌「Science Advances」に、8月4日付で掲載されました。

出典
名古屋大学 プレスリリース

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