神経堤細胞から進行性骨化性線維異形成症の異所性骨が形成されることをCiRAが解明
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は6月7日、神経堤細胞という発生期に一時的に出現する細胞から異所性骨が作られることを示唆する研究成果を発表しました。今回の研究結果は、今後、iPS細胞を使った異所性骨研究に役立つと考えられています。
本来、骨が形成されない組織に異所的に骨が形成される異所性骨化は、外傷や外科手術後に偶発的に形成される場合もありますが、進行性骨化性線維異形成症のように、遺伝子の変異が原因となって体内に形成される場合もあります。なお、進行性骨化性線維異形成症(fibrodysplasia ossificans progressive:FOP)は、幼少期から全身の筋肉や腱、靱帯などが徐々に固くなり骨に変わっていく疾患であり、希少難病のひとつです。
これまで、マウスを用いた実験の結果から、異所性骨は、筋肉細胞からではなく、筋肉組織中に存在する間葉系間質細胞から形成されることが明らかになっていましたが、この間葉系間質細胞の元となる細胞(発生上の起源細胞)については明らかになっていませんでした。今回の研究では、この間葉系間質細胞が神経堤細胞から作られることを示しました。
さらに、進行性骨化性線維異形成症(FOP)の変異遺伝子を神経堤細胞で発現するようにした進行性骨化性線維異形成症(FOP)モデルマウスを作製し、進行性骨化性線維異形成症で異所性骨を誘引する刺激として知られるヘビ毒のカルディオトキシンを投与したところ、異所性骨が誘導されました。この結果、神経堤細胞にFOP変異をもつマウスは異所性骨を形成することが明らかになりました。
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)はプレスリリースにて「今回、生体の異所性骨の原因細胞である筋肉組織中の間葉系間質細胞は、神経堤細胞の子孫細胞であることが示されました。これにより、iPS細胞から神経堤細胞を経由して作製した間葉系間質細胞を使って異所性骨を研究することは、科学的に適切であるということが示されました。この細胞に着目して研究をすることで、新しい治療法が開発される可能性があります」と今後の展望について述べるとともに、「筋肉組織内に存在する間葉系間質細胞は、筋肉の恒常性や再生に寄与することが知られています。今回の研究グループの研究成果は、異所性骨化の研究だけでなく、間葉系間質細胞が原因で生じる骨格筋関連疾患の治療法開発にもつながる成果です」と締めくくっています。
なお、同研究の詳細は、学術誌「Genes&Diseases」に5月29日付で掲載されました。