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全身性エリテマトーデスの発症・増悪に関わる遺伝子発現異常を同定

理化学研究所は8月23日、全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に関わる免疫細胞の遺伝子発現異常を多数同定しましたと発表しました。

この成果は、同研究所生命医科学研究センター自己免疫疾患研究チームの中野正博特別研究員、ヒト免疫遺伝研究チームの石垣和慶チームリーダー、自己免疫疾患研究チームの山本一彦チームリーダーと、東京大学大学院医学系研究科アレルギー・リウマチ学の藤尾圭志教授らの共同研究グループによるもので、科学雑誌「Cell」オンライン版に8月22日付で掲載されました。

全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身のさまざまな臓器に炎症や障害を起こす難治性自己免疫疾患であり、発症後に寛解と増悪(重症化)を繰り返します。病気の原因は不明ですが、20~40代の女性に発症しやすい疾患です。

全身性エリテマトーデス(SLE)発症の原因を解明するためには、患者さんに起きている免疫状態の異常を調べる必要がありますが、過去の遺伝子解析研究では、一度の研究で調べる全身性エリテマトーデス(SLE)患者数が少なかったため、原因解明に至っていませんでした。今回の研究では、さまざまな症状の全身性エリテマトーデス(SLE)患者さんの遺伝子発現パターンを調べることで、全身性エリテマトーデス(SLE)の病態メカニズムを詳細に解明することを目指しました。

共同研究グループは、機能ゲノムコホート「ImmuNexUT」におけるSLE患者さん136例と健常人89例から27種におよぶ免疫細胞6,386サンプルをセルソーターで分取。RNAシーケンスで遺伝子発現量を網羅的に調べる過去最大規模の解析を実行しました。

その結果、大きく2つのタイプの遺伝子発現パターンを定義することが判明。1つは寛解状態にある非活動性のSLE患者群と健常人を比較した発現変動遺伝子からなる「疾患状態シグネチャー」と呼ばれるタイプで、疾患の発症に関わる遺伝子群を反映するとのこと。もう1つは高疾患活動性と非活動性のSLE患者群を比較した発現変動遺伝子からなる「疾患活動性シグネチャー」と呼ばれるタイプで、疾患の増悪に関わる遺伝子群を反映するそうです。

画像はプレスリリースより

また、27の細胞種それぞれで解析を行ったところ、疾患状態シグネチャー、疾患活動性シグネチャーともに1細胞種当たり約2,000もの発現変動遺伝子を同定。細胞種ごとに疾患状態シグネチャーと疾患活動性シグネチャーを比較すると、多くの細胞で両者の遺伝子のメンバーが大きく異なることが明らかになりました。この結果から全身性エリテマトーデス(SLE)の発症と増悪では、異なる病態メカニズムが働いている可能性が高いことが初めて明らかになったといいます。

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療目標は、疾患活動性をなるべく抑制することで再燃やダメージの蓄積を予防することと定められています。今回同定された疾患活動性シグネチャーに含まれる遺伝子情報を基点に、病態メカニズムに即した形で新たな治療標的の開発が期待されます。さらに、今後同一患者の遺伝子発現状態の推移を追う縦断的研究を行うことで、全身性エリテマトーデス(SLE)の予後や再燃を予測する目安となるバイオマーカーの同定につながる可能性が期待されます。

出典
理化学研究所 プレスリリース

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