認知症リスクが高いパーキンソン病に対するドネペジル投与、認知機能や非運動症状が改善する可能性
東北大学は7月21日、認知症リスクが高い重度嗅覚障害を伴うパーキンソン病患者さんに対し、ドネペジルを4年間投与し、一定の認知機能改善効果や一部の非運動症状が改善する可能性が示されたと発表しました。
この研究成果は、同大大学院医学系研究科高齢者認知・運動機能障害学講座の武田篤教授と仙台西多賀病院の馬場徹パーキンソン病センター長らの研究グループと、パーキンソン病診療を専門とする全国21施設の専門家と共同で行った多施設共同長期前向き研究によるもの。科学誌「eClinicalMedicine」に7月14日付で掲載されました。
パーキンソン病は、中脳黒質ドパミン神経細胞の変性を生じる病気であり、手足が震えたり転びやすくなったり、筋固縮などの症状が現れます。近年では、ドパミン神経だけでなくアセチルコリン神経が変性していることが判明し、アセチルコリン神経障害は嗅覚障害やレム睡眠行動異常症、軽度認知機能障害などさまざまな非運動症状と関係すると考えられています。
今回の研究では、重度嗅覚障害を伴うパーキンソン病患者さん201名を対象に検証を実施。ドネペジル投与群103名、プラセボ群98名に分け、ドネペジルを4年間投与し、認知症発症を予防できたかを調べました。
その結果、ドネペジル投与群のうち7名(6.8%)およびプラセボ群のうち12名(12.2%)が4 年以内に認知症を発症し、認知症発症リスクに統計学的な有意差はありませんでした。しかし、認知機能検査成績はドネペジル投与群とプラセボ群を比較すると、ドネペジル投与群が良好な結果を示し、便秘・めまい・疲労感といった非運動症状が軽症になっていました。
今回の成果について、研究グループはプレスリリースにて、「今後さらに研究を進めることで、より確実な認知症予測・予防法の開発を目指していきたいと考えています」と述べています。