全身性強皮症に対するB細胞除去療法の長期にわたる有効性と安全性、医師主導治験で確認
東京大学医学部付属病院は6月29日、B細胞除去薬であるリツキシマブの長期(48週間)にわたる有効性と安全性を多施設共同医師主導治験で証明したと発表しました。
この研究成果は、同院皮膚科の佐藤伸一教授、吉崎歩講師、江畑慧助教らの研究グループによるもの。治験の結果は、科学誌「The Lancet Rheumatology」オンライン版に6月29日付で掲載されました。
全身性強皮症は、皮膚や、肺・消化管・食道・心臓などの全身に線維化病変が起こる指定難病です。国内には、少なくとも2万人以上の患者さんが存在し、診断基準を満たさない軽症例を含めると4万人以上が罹患していると考えられています。未治療のまま放置すると症状が進行し、肺線維症になる可能性が高くなりますが、根本的な治療は存在しません。
今回の医師主導治験では、24週間の二重盲検期と、これに続く24週間の実薬投与期で構成。二重盲検期にプラセボが投与されていた患者さんは、実薬投与期ではリツキシマブが投与され、もともとリツキシマブが投与されていた患者さんは実薬投与期においてもリツキシマブの投与が行われました。
その結果、はじめにプラセボが投与されていた患者さんでは、リツキシマブの投与後から皮膚硬化と肺機能の改善。また、はじめからリツキシマブが投与されていた患者さんでは、二重盲検期で見られた改善効果が維持されていることが明らかとなりました。はじめにプラセボを投与されていた患者さんとリツキシマブが投与されていた患者さんに、実薬投与期における有害事象の頻度に差はなく、リツキシマブの投与回数に比例して、有害事象も増加も認められませんでした。
リツキシマブは強皮症の治療薬として保険適用となっていますが、治験の枠組みの中でリツキシマブを強皮症に対して長期間用いた研究は存在しておらず、有効性がどの程度の期間維持され、また、長期間用いた場合の安全性は不明でした。今回の研究で、これまでよりも長期間(48週間)における有効性と安全性が示されたことにより、患者さんと医師が治療法を選択する際の一助となる一方で、今後さらに長期間にわたる検討を行っていく必要があるとしています。