表皮蛋白を攻撃するT細胞をリンパ節で排除する新機構を解明
慶應義塾大学は1月11日、自身の表皮蛋白を攻撃するT細胞をリンパ節で排除する新たな機構を明らかにしたと発表しました。
この研究成果は、同大医学部皮膚科学教室の入來景悟共同研究員(研究当時:大学院生)、高橋勇人准教授、天谷雅行教授らの研究チームによるもので、科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」2021年12月7日付で掲載されました。
ヒトは病原体を排除する手段として免疫機能を備えており、この機能によってさまざまなウイルスや細菌を撃退できる多様性がある一方、誤って自身を攻撃しないようにする仕組みである「免疫寛容機構」があります。この免疫寛容機構は、主に胸腺で免疫細胞が作られる段階で機能する「中枢性機構」と、末梢組織で免疫細胞が標的抗原を攻撃する段階で機能する「末梢性機構」に分けられます。この機構が機能せずに、自己反応性T細胞が生まれると、自身に対する攻撃が起こり、組織が傷害されると自己免疫疾患の発症につながります。
今回、研究チームは、皮膚の細胞の結合蛋白で、自己免疫疾患の尋常性天疱瘡(指定難病35)で免疫の標的である「デスモグレイン3(Dsg3)」に対する免疫寛容機構のうち、末梢性機構の解析を実施。その結果、中枢性機構により除去されることを回避したDsg3反応性T細胞が末梢で排除される仕組みが存在することが判明し、この仕組みには制御性T細胞が持つ「OX40」という分子が不可欠な役割を担っていることを明らかにしたといいます。
この基礎研究の成果は、ヒトの身体を健康に保つ為の巧みな機構の一端を明らかにしたものであり、自己免疫疾患の新しい治療法や発症予防法の開発につながりうる成果です。
今回の研究成果について、研究チームはプレスリリースにて、「この報告は、OX40を用いた機構を明らかにすることで、制御性T細胞の機能と重要性をより明確にしたものであり、有効な新規自己免疫疾患治療の開発に寄与しうる有用な報告と考えられます」と述べています。