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低ホスファターゼ症小児患者さんを対象に高純度間葉系幹細胞「REC-01」の移植治験を開始

島根大学医学部附属病院は7月15日、同大医学部小児科の竹谷健教授らを責任医師とする研究グループが、低ホスファターゼ症小児患者さんを対象に、骨分化能が高い高純度間葉系幹細胞製剤(REC-01)を移植する新しい治療法の安全性、有効性を評価する医師主導治験を開始すると発表しました。

低ホスファターゼ症は、骨の形成に必要な酵素であるアルカリホスファターゼが生まれつき少なく、石灰化障害による骨の湾曲、易骨折性、歯の脱落などが確認される難病です。また、中枢神経の症状として、けいれんや難聴、発達遅滞も生じます。

肋骨をはじめとする胸郭の低形成による呼吸障害がある場合、生命予後が悪く、最も重症な周産期に発症する患者さんの死亡率はほぼ100%とされています。国内患者数は100~200人とされ、国の難病指定を受けています。

現在の低ホスファターゼ症の治療法としては、骨の石灰化を改善させる酵素補充療法がありますが、生涯に渡って定期的に投与する必要があることや、酵素に対する抗体が産生されて効果が減弱すること、脳血液関門を通らないため中枢神経系症状は改善しないこと、医療費が高額であることなど、問題点があります。このため、骨形成をはじめとする症状の改善効果が高く、効果が持続する治療方法(根治療法)が必要とされています。

これまでに竹谷教授らは、低ホスファターゼ症に対するヒト幹細胞を用いた臨床研究を実施し、間葉系幹細胞の移植による全身骨の再生に世界で初めて成功していました。しかし、同臨床研究で実施された症例では、骨構造が正常レベルに達するまでの改善には至らなかったそうです。

一方、同大医学部生命科学講座の松崎有未教授らは、ヒト骨髄液から、極めて純度の高い間葉系幹細胞を分離する技術を開発。この技術で選別された増殖能・分化能の高い高純度間葉系幹細胞(REC)を骨形成不全に適用することを目指し、同大学発バイオベンチャーPuREC株式会社を設立していました。

画像はリリースより

竹谷教授はこのRECを活用し、改めて低ホスファターゼ症を治療することを企図。2017年より 日本医療研究開発機構(AMED)の「橋渡し研究戦略的推進プログラム・シーズB」の助成を受け、非臨床研究を進め、安全性の確認を行うとともに、RECの生体内での生着による骨の形成に必要なアルカリホスファターゼの産生、さらには骨分化をも確認することで、同治験の有効性の示唆を得たとのことです。

この結果を受けて今回、島根大学医学部附属病院は、低ホスファターゼ症の根治療法の実現に向けたREC-01移植の安全性および有効性を評価するための医師主導治験を実施。同治験はAMEDの「再生医療実用化研究事業」の支援のもと、岡山大学新医療研究開発センターの協力により実施され、治験で用いるREC-01は、PuRECと株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングから提供されるとしています。

なお、同試験の概要は以下の通りです。

治験製品

REC-01(高純度間葉系幹細胞)

対象

低ホスファターゼ症

目的

REC-01の安全性、生着率、全身骨の成長状況、ならびにバイオマーカーの検討

デザイン

第I/IIa相試験(First in Human試験):非盲検・非対照試験

計画症例数

3例

登録期間

2021年7月~2022年9月(但し、3例目の投与確定まで)

治験責任医師

島根大学医学部・小児科 竹谷 健

治験に関する問い合わせ先

島根大学医学部附属病院 治験事務局 小田泰昭
TEL:0853-20-2220
E-mail:y-oda“AT”med.shimane-u.ac.jp

出典元
日本医療研究開発機構 プレスリリース

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