人工知能技術を活用したALS診断への応用可能性
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)を中心とする研究グループは、人工知能のひとつであるDeep learningの技術を用いて健康な人とALS患者のipS細胞から作製した運動ニューロンをそれぞれ高精度に見分けるモデルを構築しました。このDeep learningとiPS細胞を活用した疾患予測の手法はALSの早期診断や早期治療の促進に繋がると期待されています。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は筋肉を動かすための神経が障害を受けるために、徐々に筋肉が瘦せていき力が入らなくなる難病です。国の指定難病にも指定されており、国内に約10万人程度の患者がいると推定されています。現在までに根本的な治療法は確立されておらず、治療法の登場が待たれています。ALSの診断は神経学的な所見に基づいて行われますが、こうした所見は疾患が進行するまでわからないことも多く速やかな診断方法の確立が望まれます。そこで本研究グループは健常者およびALS患者から作製したiPS細胞画像に対し、Deep learningによるALSの予測に取り組みました。
研究グループ健康な方とALS患者それぞれ15名ずつのiPS細胞に由来する運動ニューロンを作製し、その画像6,750枚を人工知能に学習させました。こうして作られたモデルは高い精度でALS患者の運動ニューロンを見分けることができました。このモデルは運動ニューロンの細胞タイト神経突起に着目して判断していることが明らかになり、さらに発症からの期間が長い患者の運動ニューロンほど見分けやすいことが示されました。