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肺胞蛋白症の発症に関わる遺伝子を同定

大阪大学をはじめとする研究グループは肺胞蛋白症(指定難病229)について、世界初のゲノムワイド関連解析研究によって発症リスク遺伝子が免疫機能に関与するHLA領域に存在することを特定しました。今回同定された原因遺伝子の更なる解析により、患者ごとの遺伝的変異に対する個別化医療への発展が期待されます。

自己免疫性肺胞蛋白症は40~50歳代に発症することが多い疾患で、有病率は100万人あたり6人程度と推定されています。サーファクタントと呼ばれるタンパク質の様な物質が肺胞に異常に溜まってしまうことで、うまく酸素と二酸化炭素のガス交換ができなくなります。現在の主な治療法は全身麻酔下で肺の中のサーファクタントを洗い流すための全肺洗浄法であり、根本的な治療法は確立されていません。本来、不要なサーファクタントは肺胞マクロファージにより分解されますが、肺胞蛋白症の患者では肺胞マクロファージの成長に必要なGM-CSFを攻撃する自己抗体(抗GM-CSF抗体)がみられます。しかし、どのようなメカニズムでGM-CSFに対する自己抗体が作られるのかは不明でした。

そこで本研究グループは肺胞蛋白症患者の遺伝的変異に着目し、肺胞蛋白症患者198名に対しゲノムワイド関連解析を試みました。その結果、ヒトの免疫機能に強く関与しているHLA遺伝子領域の遺伝的変異は肺胞蛋白症の発症に関わることを見出しました。意外なことに、最も強いリスクと推定されるHLA(HLA-DRB1*08:03)は対照群中でも7.4%検出されました。またHLA-DRB1*08:03は抗GM-CSF抗体の量を増やす効果もありました。HLA-DRB1*08:03はバセドウ病、原発性胆汁性胆管炎、全身性エリテマトーデスなどの発症にも関わることが示唆されています。

出典元
大阪大学大学院医学系研究科・医学部 主要研究成果

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