世界希少・難治性疾患の日(RDD)にあわせセミナー開催
RDD日本開催事務局とファイザー株式会社は2021年2月16日、2月最終日に設定された「世界希少・難治性疾患の日(RDD)」に合わせセミナーを開催しました。本セミナーでは日本国内の難病・希少疾患領域を取り巻く課題のほか、今後の治療法開発に対する期待や重要性が語られました。
『筋ジストロフィーを取り巻く治療法開発の現状について~特にDMDを中心に~』
国立精神・神経医療研究センター TMC 臨床研究支援部長 中村治雅先生
筋ジストロフィーは全身の骨格筋が壊れやすくなる遺伝性筋疾患の総称です。いくつかの疾患が含まれますが、どれも筋肉に必要なタンパク質のもととなる遺伝子に変異が生じることで発症します。筋力低下に伴い、呼吸器障害や心機能障害など徐々に全身症状が生じます。近年の医療技術の発達などにより、寿命が大きく伸びています。製薬業界でも希少疾患治療薬への関心は高まっており、薬品の開発品目も徐々に増加しています。これまでにステロイド治療をはじめ、エクソンスキップ(遺伝子組み換え治療)やリードスルー治療などの遺伝子治療も行われるようになってきました。これらの遺伝子治療には課題もまだ多く、更なる治療法の改良が待たれます。近年ではHALなどのロボットを活用した症状改善も着目されており、新たな薬剤とHALを組み合わせた治療法で歩行機能の獲得にも繋がると期待されています。
『疾患と向き合い、今を生きる~伝えたい私たちの願い~』
進行性デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者さん 瀬戸優磨さん
4歳の頃に進行性デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断されますが、当時はまだ幼く自身が病気であるという自覚はありませんでした。小学6年生時に正式にデュシェンヌ型筋ジストロフィーと告知されました。中学校入学時より車いすを使用しますが、幼稚園から大学までの学生生活を健常者と同じ環境で過ごしました。高校3年生の時に重度の肺炎になり1ヶ月以上の入院を余儀なくされますが、担任の先生やクラスメイトによるお見舞いが心の支えになりました。大学卒業後には就職しようと障害者向けの就職説明会に参加し面接を受けますが、いずれも不採用で現実の厳しさを知りました。その後知人の紹介で重症心身障害児者のための生活介護事業所に通い始めました。これまでを振り返って、自身のやりたいことを応援しサポートしてくれた家族には感謝しています。先生やクラスメイト、ヘルパーの方など多くの出会いに恵まれました。自身を含めて難病を抱えている方は治療法を待ち望んでいます。せめて病気の進行を止める、進行が緩やかになる治療法の開発を切に願っています。
『希少・難治性疾患に対する“Equity”への思い』
RDD日本開催事務局 西村由希子氏
Rare Disease Day(RDD)は世界希少・難治性疾患の日であり、希少疾患患者の生活の質(QOL)向上を目指して毎年2月末日に行われる世界的な啓発イベントです。“Equity”(公平)を基に医療の格差を縮小するという思いを持ち、日本でも全国各地でイベントが開催されています。2019年にスタートしたRDD高校は、高校生に対して希少・難治性疾患の興味・関心を広める活動で、今年は5校が参加します。医薬学だけでなく社会学や農学などの多方面の分野が関係している希少疾患、難治性疾患は、進路の幅を広げることにも繋がります。現在は東京駅ギャラリー展示会が開催されているほか、RDD Tokyo(オンライン配信)の開催も予定されています。