原発性高シュウ酸尿症Ⅰ型治療薬lumasiran、米国およびEUより承認を取得
アルナイラム社はlumasiran皮下注用注射剤について、小児および成人の原発性高シュウ酸尿症Ⅰ型(PHⅠ)患者に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認されたことを発表しました。PHⅠはシュウ酸塩が過剰に産生される遺伝性の希少疾患で、腎臓や尿路中に疼痛を伴う結石の形成と、腎不全や多臓器不全への進行がみられます。
原発性高シュウ酸尿症Ⅰ型(PHⅠ)はペルオキシソーム病の一種であり、肝臓内の酵素の欠損によって肝臓内のグリオキシル酸が蓄積する遺伝性疾患です。米国および欧州では100万人に1~3人程度が罹患しているとの報告があり、日本国内では1962年から2003年までに59例が報告されています。肝臓においてシュウ酸が過剰に産生される特徴を持ち、これによって腎臓結石の形成や腎石灰沈着症に繋がります。また、腎障害に伴いシュウ酸塩を効率的に排除できなくなるとさらに疾患の悪化が促進され、その後目や皮膚、心臓にもシュウ酸塩が沈着し多臓器不全に陥、さらに進行すると死亡に至ります。これまでの治療選択肢はビタミンB6のみであり、腎不全への進行を遅らせる効果に留まっていました。また、肝移植も行われてきましたが、生涯にわたる免疫の抑制が必要であり合併症のリスクからも根本的な治療の開発が待たれていました。
lumasiranはヒドロキシ酸オキシダーゼ1(HAO1)を標的とするRNAi治療薬であり、PHⅠの小児および成人患者を対象としています。RNAiはRNA干渉とも呼ばれる現象で、遺伝子発現抑制という細胞内の減少を応用した技術です。PHⅠの原因のより上流に位置する酵素グリコール酸オキシダーゼ(GO)をコードするヒドロキシ酸オキシダーゼ1(HAO1)を標的としています。lumasiranはHAO1のメッセンジャーRNAを分解し肝臓でのシュウ酸塩産生を抑制します。承認申請に先立って行われた臨床試験(ILLUMINATE-A 試験)は世界8カ国でlumasiranはプラセボと比較して尿中のシュウ酸塩濃度を有意に低下させ、患者の大半が正常、またはほぼ正常な値にまで達しました。