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早期発症の抗NMDA受容体脳炎を伴うIRAK4欠損症を報告

広島大学をはじめとする研究グループは、抗NMDA受容体脳炎を発症したIRAK4欠損症の症例を世界で初めて同定したと発表しました。IRAK4は、TLR(Toll like receptor)のシグナル伝達に関与している分子で、小児慢性特定疾病にも指定されています。乳児期から重症感染症を起こし、死亡率も高いため予防的投薬も含めて感染症の対策が重要な疾患です。

背景-早期発症の抗NMDA受容体脳炎症例

TLR(Toll like receptor)は病原体のパターンを認識する機能があるため免疫機能において重要な役割を持ちます。ヒトは10種のTRLを持っており、そのうちのほとんどのTRLシグナルはIRAK4を介して行われます。病原体を認識したTLRはIRAK4を介して炎症性サイトカインの生産を促進し病原体の排除を行います。乳幼児は獲得免疫が未熟なため、自然免疫を介した防御が非常に重要です。IRAK4欠損症は小児慢性特定疾病にも選ばれている希少な疾患であり、多数のTLRからの伝達が以降のプロセスに伝わらなくなることで肺炎球菌やブドウ球菌などの細菌感染を起こしやすくなります。抗NMDA受容体脳炎は不安や幻覚妄想、重症例ではけいれんや遷延性意識障害などがみられる脳炎です。発症には獲得免疫が関与していると考えられているため、獲得免疫が未熟な乳幼児に発症する例は非常に稀です。研究チームは獲得免疫が未熟な乳幼児に抗NMDA受容体脳炎がみられた症例について、その要因を探りました。

成果と展望- 遺伝的な免疫異常と抗NMDA受容体脳炎の関連性を示唆

研究チームは、生後10カ月で抗NMDA受容体脳炎を発症した例についてその発症要因を探索するために遺伝子解析を行った結果、IRAK4遺伝子が同定されました。IRAK4欠損症の患者ではTLRの一種であるTLR4を刺激する物質(LPS)に対する反応性が障害される事が知られています。本症例でもLSPに対する反応が障害されていたことからIRAK4欠損症であることが認められました。本症例でみられたIRAK4遺伝子の変異は過去に報告がなかったことから、IRAK4タンパク質の欠損した細胞株を作製し解析したところ、今回のIRAK4遺伝子に起こった変異は、IRAK4タンパク質の機能を著しく障害する変異であると示されました。本研究によって、早期発見例の抗NMDA受容体脳炎の一部が、先天性の免疫異常に起因している可能性が示されました。今後さらに若年発症の抗NMDA受容体脳炎の要因解明が進むと期待されています。

出典元
広島大学 プレスリリース

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