IgA腎症の炎症を引き起こす物質を同定
順天堂大学医学部および東京大学の研究グループは、疾患モデルマウスを用いてIgA腎症の炎症を引き起こす分子を同定したと発表しました。AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)タンパク質を介して、IgAと他の免疫グロブリンが共沈着すると腎臓に炎症が起こることが明らかになりました。AIMがIgA腎症の症状発現に関わっていることから、今後はAIMをターゲットとした治療薬の開発にも繋がると期待されています。
背景-末期腎不全に繋がる希少難病
IgA腎症は血尿やタンパク尿がみられる慢性の腎臓病です。国内には約30,000人の患者がいると推定されており、子供から大人まで様々な年齢層の患者が確認されています。発症してから約20年で、約4割の患者が透析が必要な状態になることが明らかになっていますが、これまでに根本的な治療法は開発されておらず、また炎症が起こるメカニズムも解明されていません。これまでの研究により、AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)が、マクロファージの機能を介して腎障害に関わっていることが徐々に明らかになってきました。そこで本研究グループはIgA腎症の炎症反応において、IgAの沈着とAIMがどのようにかかわっているかを調べました。
結果と展望-IgA腎症の症状とAIMの関連性を解明
過去の研究より、ヒトのIgA腎症と自然発症のIgA腎症マウスはどちらも、IgAと同じ個所にAIMが沈着していることが明らかになっています。本研究ではIgA腎症とAIMの関係をさらに詳しく調べるために、IgA欠損マウスとAIM欠損マウスをそれぞれ作成し解析しました。AIMを欠損したIgA腎症自然発症マウスは腎臓にIgAが沈着していましたが炎症は起きていませんでした。このマウスにAIMを投与したところ、腎臓の糸球体にIgGとIgMという抗体が沈着し、尿潜血およびタンパク尿がみられ腎症が確認されました。一方、IgA欠損マウスでは糸球体にAIM、IgG、IgMの沈着がみられませんでした。これらの結果から、糸球体へのIgA沈着だけでは腎症へと進展しないことが示されました。本研究よりAIMがIgA腎症の症状に繋がるカギとなることが明らかとなり、AIMの制御がIgA腎症の予防および治療法のターゲットとなる可能性を示唆しています。
出典元
順天堂NEWS