1. HOME
  2. 難病・希少疾患ニュース
  3. 特発性基底核石灰化症、リン酸代謝改善が発症予防や進展の抑制につながる可能性

特発性基底核石灰化症、リン酸代謝改善が発症予防や進展の抑制につながる可能性

根本的な治療薬が見つかっていない神経変性疾患の難病「特発性基底核石灰化症」

日本医療研究開発機構(AMED)は1月10日、岐阜薬科大学ら研究グループが特発性基底核石灰化症(IBGC)の原因遺伝子等の解析を行った結果、SLC20A2遺伝子の1つの変異で 特発性基底核石灰化症の脳内石灰化や症状を全く呈していないことを偶発的に見出したと発表しました。

特発性基底核石灰化症は、脳内に石灰化をきたす原因となる二次的な疾患がなく、原発性に両側の大脳基底核、小脳歯状核などに病的な石灰化を示す神経の難病です。その原因遺伝子として、これまでに5つの原因遺伝子(SLC20A2、PDGFRB 、PDGFB 、XPR1 、MYORG)が報告されています。

5つの原因遺伝子のうち、無機リン酸を細胞内へ輸送するリン酸トランスポーター(PiT-2)をコードするSLC20A2遺伝子の変異は、家族性特発性基底核石灰化症患者さんの約半数(40~50%)を占め、最も頻度が高い原因遺伝子です。

現在、特発性基底核石灰化症の根本的な治療薬はまだ見つかっておらず、特発性基底核石灰化症のさらなる病態の解明と根本的な治療法の開発が求められています。

リン酸の輸送活性の部分的な上昇が、病態改善に繋がる可能性

今回研究グループは、特発性基底核石灰化症患者さんとその家族の血液から遺伝子を抽出し、4つのSLC20A2遺伝子の変異を同定。4つ全ての変異でタンパク質の機能に障害を及ぼす可能性が示唆されたといいます。

次に、変異遺伝子の機能解析として、野生型のPiT-2、変異型のPiT-2をそれぞれ安定的に発現するChinese Hamster Ovary (CHO)細胞を樹立し、PiT-2のリン酸の輸送活性を測定したところ、特発性基底核石灰化症発症者の遺伝子変異型PiT-2が発現した細胞では、リン酸の輸送活性が著しく低下していました。その一方、特発性基底核石灰化症家系内の脳内石灰化や症状が認められない人(非発症例)で見出した遺伝子変異では、野生型PiT-2の30%ほどのリン酸の輸送活性が保持されていることが見出されました。

以上の結果から、PiT-2のリン酸の輸送活性が変異によって部分的に低下しても、特発性基底核石灰化症の病態を引き起こさない可能性が示唆されたとしています。

今回の研究成果から、PiT-2が持つリン酸の輸送活性の部分的な低下では、特発性基底核石灰化症の病態を示さないことが判明しました。この事実はリン酸の輸送活性を完全ではなくとも部分的に上昇させることで、特発性基底核石灰化症の病態の改善に繋がるのではないかと期待されます。

研究グループは今後の展望について、以下の通り述べています。

岐阜薬科大学薬物治療学研究室を中心に、東京大学、京都大学、新潟大学脳研究所などと連携して、現在、特発性基底核石灰化症患者から樹立した疾患特異的なiPS細胞や遺伝子変異の疾患モデルマウスを作製して、より詳細な発症機構の解明や治療薬の開発について研究を行っています。

https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20200110-01.html

出典元
日本医療研究開発機構 成果情報

関連記事