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ふぉんひっぺる・りんどうびょう
フォンヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau)病von Hippel-Lindau disease

小児慢性疾患分類

疾患群11
神経・筋疾患
大分類6
神経皮膚症候群
細分類19
フォンヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau)病

病気・治療解説

概要

中枢神経系の血管芽腫、網膜血管腫、腎細胞ガン、褐色細胞腫、膵病変が発生する常染色体優性の多発腫瘍性疾患。腫瘍は多発性・再発性で、多血症、高血圧に加えて、視力障害、運動障害、膀胱直腸障害、腎不全、不妊症を合併する。腎細胞ガンの一部は他臓器転移し死亡原因となる。

疫学

欧米では36,000人に1人の発生とされる。日本には200家系、患者数600~1,000人が存在すると推定される。家族性が8~9割、孤発例が1~2割。

病因

原因遺伝子は3番染色体p25 von Hippel-Lindau腫瘍抑制遺伝子(VHL遺伝子)で、約6割がミスセンス変異、約4割がフレームシフトやナンセンス変異で、後者は腎細胞ガンと関連する。遺伝子異常と病態との関係は十分解明されていないが、hypoxia inducible factor(HIF)α-subunitに対するE3ユビキチンリガーゼ活性に関し研究が進んでいる。低酸素下ではHIF-αはVEGFなどの転写を促進し血管新生を誘導する。酸素存在下ではHIF-αはVHLタンパクでユビキチン化されプロテアソームで分解される。相同染色体のVHL遺伝子不活化などでVHL機能が失われるとVEGFが過剰に発現され腫瘍が生じる。

症状

血流が豊富な腫瘍が多臓器に発生する。中枢神経系(小脳>脊髄>脳幹)の血管芽腫(約80%)、網膜血管腫(50~70%)、腎細胞ガン(約40%)、副腎の褐色細胞腫(10~20%)、膵病変(膵嚢胞、ラ氏島腫瘍)、精巣上体嚢胞(約50%)、側頭骨内の内リンパ管腺腫などがある。多くが両側性または多発性に生じ、幼児期~50歳代まで再発する可能性がある。網膜血管腫は10歳前後、中枢神経系血管腫は20歳前後、褐色細胞腫は20~30歳、腎細胞ガンは30歳代後半に発症する。褐色細胞腫の有無により、type 1:褐色細胞腫を伴わない、type 2A:褐色細胞腫に血管芽腫を伴う、type 2B:褐色細胞腫、血管芽腫、腎細胞ガンを伴う、type 2C:褐色細胞腫のみのもの、に分類される。
中枢神経系の血管芽腫、網膜血管腫、褐色細胞腫などは良性であるが、腎細胞ガン、ラ氏島腫瘍の一部は他臓器やリンパ節に転移し死亡原因となる。血流豊富な多臓器腫瘍による多血症、褐色細胞腫に伴う高血圧に加えて、腫瘍と手術侵襲に伴い、視力障害、小脳性運動失調、運動麻痺、膀胱直腸障害、腎不全、不妊症など二次的な身体障害の合併もみられる。頻回の手術も精神的な負荷となる。

治療

すべての腫瘍に対して摘出手術が考慮され、場合によっては罹患臓器の摘出も必要となる。網膜血管腫はレーザー焼灼術で治療する事もある。中枢神経系の血管芽腫に対してガンマナイフ療法を行うこともあるが、十分検証されていない。また、褐色細胞腫に対して腹腔鏡手術も試みられている。

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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