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すくしにるこえーりがーぜけっそんしょう
スクシニル-CoAリガーゼ欠損症Succinyl-CoA ligase deficiency

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類4
ミトコンドリア病
細分類53
スクシニル-CoAリガーゼ欠損症

病気・治療解説

概要

スクシニル-CoAリガーゼ(SUCL)欠損症は、TCAサイクルの一因でもあるSUCLの活性欠損によりミトコンドリア呼吸鎖異常とメチルマロン酸の尿中への少量排泄を伴う常染色体劣性遺伝性疾患1)であり、古くはメチルマロン酸尿を伴うLeigh脳症とよばれていた疾病である。

疫学

世界で10数例、日本で1例の報告があるのみの非常に希な疾患である。

病因

SUCLはTCAサイクルではα-ケトグルタル酸に、それ以外はおもにメチルマロニル-CoAに由来するスクシニル-CoAをコハク酸に転換する酵素で、GDP/GTP系(G-SUCL)とADP/ATP系(A-SUCL)の2つのタイプが存在する。ともにαサブユニットとβサブユニットからなるが、αサブユニットは2つのタイプの酵素で共通のSUCLG1がコードし、βサブユニットはそれぞれSUCLG2とSUCLA2がコードする。現在までにSUCLG1異常症2) 3)(ミトコンドリアDNA枯渇症候群(MTDPS)9)とSUCLA2 異常症4)(MTDPS 5)とが報告されている。G-SUCLは肝臓、腎臓、心臓で、A-SUCLは脳、精巣、腎臓、心臓で、それぞれ強く発現している。SUCLG1異常症では2つのタイプの酵素に共通のαサブユニットに異常があり、G-SUCL 、A-SUCL共に活性が低下し重症である。これに対し、SUCLA2 異常症ではA-SUCLのβ鎖のみの障害でありG-SUCLの活性は保たれ軽症ではある。しかし病態は共通の部分も多く以下まとめて論ずる。

症状

典型例では生後数日から著名な乳酸アシドーシスを来たし、致死型乳児ミトコンドリア病(lethal infantile mitochondrial disorder: LIMD)といわれる経過を取る。G-SUCL、A-SUCLの活性がともに低下するSUCLG1異常症のほうがより重症で、画像上の基底核病変(いわゆるLeigh様症候群)、脂肪肝から肝不全も合併し、多くは乳児期早期までに死亡する。これに対しA-SUCLのみ低下するSUCLA2異常症は、時にはLIMDとしての重症病型をとることもあるが、乳児期に運動発達遅滞、筋緊張低下、ジストニア、難聴などの神経症状で発症し、画像上の基底核病変も顕著な者が多く、メチルマロン酸排泄を除けばLeigh脳症と鑑別できない。SUCLG1異常症と異なり肝障害はないが、これはA-SUCLが肝臓での発現が低いことで説明できる。
SUCLの基質であるスクシニル-CoAの蓄積によりメチルマロニル-CoAムターゼが抑制され、メチルマロン酸(表5))、メチルクエン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸の尿中排泄が増加する。その他にコハク酸、クエン酸、α-ケトグルタル酸などのTCAサイクル中間体も尿中に検出される。血中にはスクシニルカルニチン、メチルマロニルカルニチン(両者ともC4DCカルニチンとしてタンデムマス上で検出)、プロピオニルカルニチン(C3カルニチン)が増加する。
ミトコンドリアDNA枯渇症候群(mitochondrial DNA depletion syndrome: MTDPS)を来す。それは細胞内ではSUCLがミトコンドリアヌクレオチド2リン酸キナーゼ(NDPK)と複合体を形成しており、SUCLの異常がNDPKにも影響しミトコンドリアDNA生合成に影響するためとされる。しかしMTDPSとならない症例も報告3)されており、今後の検討が待たれる。

診断

『診断の手引き』参照

治療

急性期にはミトコンドリアレスキュー療法を考慮し、慢性期には有効とされる各種治験薬を一つ一つ慎重に試すことが必要になるが、詳細は呼吸鎖複合体異常症のページを参照されたい。

成人期以降

感染などを契機とし死亡する例も多いが、特にSUCLA2異常症では成人期まで生存例の報告もある。

参考文献

1) Ostergaard E.: Disorders caused by deficiency of succinate-CoA ligase. J Inherit Metab Dis 2008; 31: 226-9
2) Ostergaard E et al.: Deficiency of the alpha subunit of succinate-coenzyme A ligase causes fatal infantile lactic acidosis with mitochondrial DNA depletion. Am J Hum Genet 2007; 81: 383-7
3) Sakamoto O et al.: Neonatal lactic acidosis with methylmalonic aciduria due to novel mutations in the SUCLG1 gene. Pediatr Int 2011 ; 53: 921-5
4) Elpeleg O et al.: Deficiency of the ADP-forming succinyl-CoA synthase activity is associated with encephalomyopathy and mitochondrial DNA depletion. Am J Hum Gene. 2005; 76: 1081-6
5) Fowler B, et al.: Causes of and diagnostic approach to methylmalonic aciduria. J Inher Metab Dis 2008; 31: 350-60

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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