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こはくさんせみあるでひどだっすいそこうそけっそんしょう
コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素欠損症Succinic semialdehyde dehydrogenase deficiency

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類11
神経伝達物質異常症
細分類127
コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素欠損症

病気・治療解説

概要

コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素(SSADH)欠損症は脳内の重要な神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の先天代謝異常症のひとつで、精神運動発達遅滞を伴うまれな遺伝性疾患である。SSADHの欠損でGABAの代謝産物であるコハク酸セミアルデヒド(SSA)がコハク酸に変換されないため、SSAの濃度が上昇するが、SSAは4-ヒドロキシ酪酸(GHB)に代謝され尿中に排泄されるためGHB尿症を呈する。このためGHB尿症とよばれることもある。非特異的な神経症状が多いため、実際には正確な診断を受けていない症例も存在する可能性がある。

疫学

1981年にJakobs ら1)が最初に発見し、1983年にGibsonら2)がSSADH欠損症の2例を報告した。SSADH欠損症はGABA代謝異常症では最も頻度の高い疾患で世界では150例以上の報告があるが本邦では2001年のIshiguroらの報告3)が最初でこれまでまだ数例しか発見されていない。

病因

SSADH欠損症は、6番染色体(6q23)に存在するSSADH酵素蛋白をコードする遺伝子(ALDH5A1)の変異に起因する遺伝性疾患で、常染色体劣性遺伝形式をとる。SSADHの先天的な欠損により、GABAの代謝産物であるSSAがコハク酸に変換されないため、SSAの濃度が上昇するが、SSAは4-ヒドロキシ酪酸(GHB)に代謝され尿中に排泄されるためGHB尿症を呈する。本疾患の病因におけるGHBの役割は不明である。

症状

通常乳児期の初期に現れ始めその症状には軽度から中等度の発達遅滞、精神遅滞、言語表出障害、著しい筋緊張低下、睡眠障害、不注意、多動、不安腱反射低下、非進行性小脳失調、けいれんと多彩であり、通常は非進行性だが、まれに(10%)進行性の場合がある。

診断

① 画像検査ではMRIでSSADH欠損症ではT2強調像で淡蒼球の対称性の高信号を認める。プロトンMRスペクトロスコピー(1H-MRS)で両側基底核にGABA濃度 の上昇を認める。尿中有機酸分析でGHBの上昇を認める。髄液の分析で GABA の上昇を認める。酵素診断は培養リンパ芽球を用いて、SSADH活性の低下により診断する。遺伝子解析は、ダイレクトシークエンス法やMLPA法によりALDH5A1遺伝子の解析を行う。

治療

治療は確立していない。タウリンの投与の有効性が動物モデルや症例報告で報告されているが、その作用機序ははっきりしていない。

予後

SSADH欠損症の予後は様々で重症の場合には死に至ることもあり、一般に不良である。

参考文献

1) Jakobs, C., Bojasch, M., Monch, E., Rating, D., Siemes, H., Hanefeld, F. Urinary excretion of gamma-hydroxybutyric acid in a patient with neurological abnormalities: the probability of a new inborn error of metabolism. Clin. Chim. Acta 1981;111: 169-178.
2) Gibson, K. M., Sweetman, L., Nyhan, W. L., Jakobs, C., Rating, D., Siemes, H., Hanefeld, F. Succinic semialdehyde dehydrogenase deficiency: an inborn error of gamma-aminobutyric acid metabolism. Clin. Chim. Acta 1983;133: 33-42.
3) Ishiguro Y, et al: The first case of 4-hydroxybutyric aciduria in Japan. Brain Dev. 2001;23:128-130.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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