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のうほうせいかんせん
膿疱性乾癬pustular psoriasis

指定難病37

他に、膿疱性乾癬(汎発型)もあります。

膿疱性乾癬
急性汎発性膿疱性乾癬
小児汎発性膿疱性乾癬
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概要

「乾癬(かんせん)」という皮膚病のうち、発熱や皮膚の発赤とともに「膿疱(のうほう~皮膚に膿がたまったもの)」がたくさん出現する病型を「膿疱性乾癬」と呼び、尋常性(じんじょうせい)乾癬(最も多いタイプの乾癬)と区別しています(図1-3)。膿疱は血液中の白血球が集まったものですが、細菌感染ではありません(無菌性膿疱と呼ばれます)ので、他人に伝染する心配はありません。

 

 
膿疱性乾癬はさらにいくつかの病型に区別されます。膿疱性乾癬の皮疹が、体の一部だけ(手のひら、足の裏、指先など)にみられる病型(限局型と呼ばれます)や、環状の乾癬皮疹に小膿疱が混じる病型があります。また、尋常性乾癬の患者さんに一時的に膿疱を生じることがあります。これらの病型は、通常、全身症状は軽度で、一時的であるため特定疾患の対象外です。
一方、発熱、全身倦怠感、発赤や四肢のむくみとともに全身に膿疱が出現する重症な病型があります。このような病型は「膿疱性乾癬(汎発型)」と呼ばれます。また、妊娠中に生じる膿疱性乾癬(汎発型)は、「疱疹状膿痂疹(ほうしんじょうのうかしん)」という病名で呼ばれることがあります。これらは特定疾患の受給対象です。以下に、膿疱性乾癬(汎発型)について解説します。

罹患数

膿疱性乾癬(汎発型)の特定疾患受給を受けている患者さんは、全国で約1,800-1,900人います。1年間に80名ぐらいが新規に特定疾患受給対象者になっています。

疫学

尋常性乾癬(最も多い病型)は男性患者が女性患者の2倍多いのですが、膿疱性乾癬(汎発型)の場合には男女差はありません(図4、5)。
特定疾患の受給者をみると50-70歳代に患者さんのピークがあります。20-30歳代の患者さんは、妊娠中の膿疱性乾癬(汎発型)(別の病名は「疱疹状膿痂疹」)が発症するために女性患者が多くみられます。つまり、妊婦さんは膿疱性乾癬(汎発型)を発症しやすくなります。幼児や小児期にも膿疱性乾癬(汎発型)が発症することがあります。

 

原因

一部の膿疱性乾癬(汎発型)患者さんには、炎症反応を抑える物質の一つである「インターロイキン(IL)-36受容体拮抗分子(IL-36Ra: IL-36受容体アンタゴニストと呼びます)」が遺伝的に欠損している例や、炎症を起こすCARD14遺伝子の機能が高いことが分かりました。つまり、炎症を止めるブレーキ役の物質が不足するか、炎症のアクセル役の分子が増加しているために、容易に全身性炎症を起こし、皮膚には発赤やむくみを生じるのです。そのほかの原因は、はっきり分かってはいません。感染症や妊娠などを契機として,皮膚の細胞やリンパ球が分泌するある種の物質(サイトカイン)が高熱の原因となり、血液中の白血球を皮膚に呼び寄せて膿疱を形成すると考えられています。

遺伝

一部の膿疱性乾癬(汎発型)や尋常性乾癬では家族内で発生する(遺伝する)ことが知られ、いくつかの遺伝的因子があることが分かってきました(乾癬疾患感受性遺伝子:PSORSと呼ばれています)。最近、膿疱性乾癬の一部では、炎症反応を抑える物質の一つであるインターロイキン(IL)36受容体拮抗分子(IL-36Ra)が作れない患者さんがいることが分かりました。IL36RNというIL-36受容体拮抗分子を作り出す遺伝子は、両親から受け継いだ二対の遺伝子からなりますが、その両方に何らかの異常がみられると、この分子を作れません。どちらか片方だけ異常の場合でも膿疱性乾癬(汎発型)を発症することもあります。不思議なことに両方の遺伝子に異常があっても発症するとは限りません。
もう一つ、CARD14という遺伝子の機能が高いために、炎症を起こしやすい患者さんがいることが分かりました。乾癬で知られている他の遺伝子異常とIL36RN遺伝子やCARD14遺伝子異常が組み合わされた場合にどのような病型をとるのか未だ不明です。しかし、これらの遺伝子が正常であっても膿疱性乾癬(汎発型)が発症することも多いので、未知の遺伝的要因やその他の要因が発症に関連していると思われます。

症状

最初に灼熱感とともに全身に紅斑(こうはん~皮膚の赤み)ができます。多くの患者さんは、この時に寒気がして高い熱が出ます。また、全身がむくんだり、関節が痛んだりすることもあります。それに引き続いて、紅斑の上にたくさんの膿疱が出てきます。一部の患者さんでは、目の炎症(結膜炎、虹彩炎、ブドウ膜炎など)が一緒に出ることもあります。皮膚に膿疱が多発すると、皮膚の大切な機能であるバリア機能が下がり、体内の水分バランスは崩れやすくなります。また、高い熱が出ることが多く、体力を消耗してしまいます。こういった状態が長く続くと、心臓や腎臓に負担がかかり、特に高齢の患者さんでは命にかかわることもあります。適切な治療によって、皮膚の赤みは徐々に消え、膿疱は破れて皮がむけて治ってきます。その後は、全く正常の皮膚に戻る場合、通常の乾癬(尋常性乾癬)の発疹に変化していく場合、あるいは手足に膿疱が出たり消えたりを繰り返す場合などいろいろです。

治療法

同じ膿疱性乾癬(汎発型)でも患者さんの年齢、妊娠や他の病気の有無、重症度、使用する薬剤の副作用などを総合的に判断して治療法を選択する必要があります。現在は、膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドラインが作成されているので、それぞれの患者さんに適した治療を選択することが可能です。膿疱性乾癬(汎発型)のほとんどの患者さんでは、入院治療が必要です。安静を保ち、高熱に対して解熱剤を使用し、点滴で水分バランスを補正し、皮膚のバリア機能を補うために軟膏を外用します。
膿疱性乾癬に効果のあるいくつかの治療薬や治療機器が開発されていますが、妊婦・授乳婦や小児の患者には使用できない薬剤や、長期使用に注意が必要な場合がありますので、医師の指示に従ってください。膿疱性乾癬では、ビタミンA酸の誘導体であるエトレチナート(商品名チガソン)という内服薬が最も使用されています。免疫抑制剤であるメトトレキサート(平成26年、保険適用なし)やシクロスポリンが使われることもあります。最近では、生物学的製剤のうちTNFα阻害薬も用いられます。さらに、血液を体外で専用カラムに活性化した好中球や単球を吸着させる療法(顆粒球・単球吸着除去療法:GMA)が保険適用になりました。紫外線治療(PUVAやNBUVB)が併用される場合もあります。これらの治療が無効なときや、患者さんの全身状態がおもわしくない場合は、副腎皮質ホルモン剤の全身投与が使用されることもあります。さらに、これらの治療法を組み合わせることもあります。

経過

急性期には強い炎症やむくみにより、血液循環が悪くなり、心臓や腎臓に負担がかかり、また、肺の毛細血管からも水分が漏れ出すことがあります。そのため、急性期に不幸な転帰をとる場合もありますが、早期に適切な治療をすることで多くの場合、危機を乗り切ることが可能です。皮膚症状に対しては、有効な治療法の組み合わせによって、症状の改善が期待できます。しかし、一旦、改善しても皮膚に紅斑や膿疱が繰り返し出現することが多いので、維持療法が必要になります。また,通常の乾癬(尋常性乾癬)に移行し、感染症や薬剤投与などをきっかけに膿疱が再発することがあります。
皮膚症状のほかに、しばしば関節炎や、まれに目の症状や粘膜病変を起こします。関節炎や全身炎症反応が長期にわたると、関節や背骨の変形や、まれにアミロイドが腎臓、消化管や心臓に沈着するために内臓の症状を起こすことがあります。

患者さんに知って欲しいこと

急性期は入院加療が原則です。感染症、妊娠や薬剤服用を契機に症状が再発することがありますので、そのような兆候があれば主治医にご相談ください。再発を抑えるためには、医師の指示に従って、飲み薬や外用療法を続けることが大切です。
エトレチナート(商品名:チガソン)やメトトレキサートは妊娠や授乳婦に使うことができません。また、それらの薬剤を使用した患者さんは、一定期間(薬剤によって異なるので注意)は妊娠や献血が制限されます。長期にわたって薬物療法を受ける場合が多いので、薬の副作用や治療薬の選択などは担当医とよく相談して決めることが大切です。

※難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jpより、許可をいただき掲載しております。