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たはつせいこくしをともなうぬーなんしょうこうぐん
多発黒子を伴うヌーナン症候群Noonan syndrome with multiple lentigines

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA500]
皮膚の黒子、肥大型心筋症、低身長、胸郭変形、および顔面形成異常を特徴とする、まれな遺伝性の多系統疾患である。

病気・治療解説

疫学

多発性黒子を伴うヌーナン症候群(Noonan syndrome with multiple lentigines:NSML)の正確な有病率および発生率は不明である。現在までに約300例が報告されている。男性にやや多いことが報告されている。

臨床像

NSML患者にみられる特徴的顔貌としては、幅広い額、眼間開離、眼瞼下垂、眼瞼裂斜下、高口蓋、低位で後方に回転した耳介などがある。胸郭変形がよくみられる。平坦な黒褐色斑として多発する黒子が主に顔面、頸部、体幹上部に現れ、粘膜にはみられず、このような黒子が本症候群の著明な特徴を構成している。黒子は4~5歳で現れ、思春期まで増加する。カフェオレ斑が単独または黒子とともに認められることもある。約4分の1の患者では成長遅滞がみられ、成人期に低身長となる。心電図異常、肺動脈弁狭窄症、進行性の伝導障害、肥大型心筋症などの心臓の異常が約50%の患者にみられる。性器異常がみられる患者もおり、具体的には片側性または両側性の停留精巣および尿道下裂(男性症例の約3分の1)、尿路異常、頻度は低いが卵巣異常もみられる。感音難聴は比較的頻度の低い特徴である(20%)。知的障害は一般に軽度で、約30%の症例に発生する。NSMLは神経芽腫、急性骨髄性白血病、および急性リンパ性白血病の発症と関連している可能性がある。

病因

NSMLは主にPTPN11遺伝子(12q24.1)の変異により生じる。それらの変異はヌーナン症候群を引き起こすことが知られているものとは異なり、これにより臨床的な表現型が大きく異なることを説明できる。一部の症例ではRAF1(3p25)、BRAF(7q34)、またはMAP2K1(15q22.1-q22.33;1例)の変異が関与すると報告されている。ほかにまだ同定されていない原因遺伝子が存在する可能性がある。

診断方法

特徴的な黒子がみられないために臨床診断が難しくなる場合がある。当初はヌーナン症候群と診断されることがある。診断の確定や臨床像が重複する症候群との鑑別に分子遺伝学的検査が有用となる場合がある。

鑑別診断

臨床像はヌーナン症候群(Noonan syndrome)と著しく重複し、鑑別に役立つ主な症候は多発性の黒子である。その他の鑑別診断としては、心臓-顔-皮膚症候群(cardio-facio-cutaneous syndrome)、コステロ症候群(Costello syndrome)、ターナー症候群(Turner syndrome)などがある。

出生前診断

家系内の罹患者で原因遺伝子変異が同定されている場合は、出生前診断が可能である。

遺伝カウンセリング

NSMLは常染色体顕性(優性)形式で遺伝する。de novo変異の割合は不明である。罹患家系には遺伝カウンセリングを行い、罹患者から子供への遺伝リスクが50%であることを伝えるべきである。

管理および治療

孤発性の黒子は凍結療法またはレーザー治療で治療されることがある。黒子の治療法としては、トレチノインクリームやハイドロキノンクリームもある。心血管系症状の治療は標準的な方法に従って行われ、定期的な心臓モニタリングが推奨される。男性患者の停留精巣も従来の手法で治療する。難聴には補聴器、教育的支援、または人工内耳が必要になることがある。

予後

平均余命は、重度の肥大型心筋症がある患者を除いた大半の患者では健常者と同等である。予後は主に心症状の重症度が関連する。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Maria Cristina DIGILIO

日本語翻訳版の監訳
緒方 勤(IRUD 臨床専門分科会 小児科(一般)委員/ 浜松医療センター 院長補佐 浜松医科大学医学部 特命研究教授)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Noonan_syndrome_with_multiple_lentigines_JP_ja_ORPHA500.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/500

最終更新日:2020年12月
翻訳日:2024年3月

本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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