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こうじょうせんぶんかがん
甲状腺分化癌Differentiated thyroid carcinoma

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA146]
典型的には無症状の甲状腺腫瘤を呈し、緩徐に増殖する、まれな上皮性甲状腺癌で、甲状腺乳頭癌(PTC)、甲状腺濾胞癌(FTC)、甲状腺ヒュルトレ細胞癌(Hurthle cell thyroid cancer:HCTC)のいずれかに分類される。

病気・治療解説

疫学

甲状腺分化癌(DTC)の年間発生率は約1/10,000であり、発生率は増加傾向にあるとみられる。男女比は約1:3である。

臨床像

PTC、FTC、およびHCTCは類似の臨床像を呈し、それぞれ全症例の約75%、20%、5%を占める。PTCの約10%は高細胞型(tall cell variant)に分類され、PTCの中で最も侵襲性の高い病型である。HCTCは、一般にPTCおよびFTCよりもやや侵襲度が高いと考えられている。診断時の年齢は通常30歳以上である。典型的な臨床像は無症状の甲状腺結節である。まれではあるが懸念すべき臨床像として、声帯麻痺による嗄声および気道または食道の閉塞などがあり、DTCの侵襲性の高い病型または甲状腺未分化癌が示唆されることがある。DTCは緩徐に増殖するため、初診時に遠隔転移があることはまれである。最も多い転移部位は頸部リンパ節である。肺または骨への遠隔転移はまれである(約5%)。小児症例はまれである。小児ではリンパ節転移を伴うことが多い。病態は一見このように侵襲度が高く見えるが、予後は極めて良好である。病理学的にはPTCは通常、乳頭癌と濾胞癌の混合型で、溝があり中心部が明るい比較的大きな核がしばしばみられる。約50%にカルシウム沈着物が含まれる。PTCには様々な組織型が報告されている。FTCは、微小濾胞ならびに被膜および脈管浸潤の存在を特徴とする。HCTCの病態はFTCと類似するが、ミトコンドリアに富む好酸性細胞質によって鑑別できる。乳頭癌様核を有する非浸潤性甲状腺濾胞腫瘍(noninvasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features:NIFTP)は、最近報告されたバリアントであり、これが前癌病変なのかDTCのバリアントなのかは、いまだ不明である。

病因

DTCは甲状腺の上皮細胞から発生する。ほとんどのDTCは散発症例で、原因不明である。電離放射線はPTCの素因となる。ヨウ素欠乏は、FTCのリスク上昇と関連している。上述した3つの癌の散発的発生の分子病態は部分的に解明されている。PTCでは、V600E BRAF変異(7q34)およびRET(10q11.2)とNTRK1(1q23.1)の融合遺伝子がよくみられる。活性化RAS変異は、PTCとFTCの両者のほか、甲状腺の良性病変でも発生する。PAX8/PPARγ融合遺伝子(2q13)は、FTCでより頻繁に認められる。PTCの約5%は家族性素因を有するが、関連する生殖細胞系列の変化は不明である。HCCは体細胞変異(DAXX、TERT、TP53、NRAS、NF1、CDKN1A、ARHGAP35、mtDNA複合体I[complex I mtDNA]など)と広範囲にわたる染色体欠失を含む独特かつ複雑な遺伝子プロファイルを有する。

診断方法

DTCは通常、身体診察または超音波検査で甲状腺内の無症状の結節として認められる。甲状腺ホルモンの血清中濃度は通常、正常である。良性結節と悪性結節の鑑別のために甲状腺穿刺吸引細胞診が頻繁に行われる。その他の診断法として、超音波検査での評価と穿刺吸引検体の遺伝子解析などがある。診断は外科切除後の病理組織検査で確定される。

鑑別診断

甲状腺結節の鑑別診断として、良性の甲状腺結節(結節性甲状腺腫、甲状腺嚢胞、濾胞腺腫)、その他の甲状腺悪性腫瘍、橋本甲状腺炎、甲状腺リンパ腫などがある。

管理および治療

DTCの治療には優先順位がある。治癒にはまず外科的完全切除が不可欠である。第二に、甲状腺ホルモンを投与してTSHを適切な濃度に抑制することが再発予防に役立つ。第三に、ほとんどのDTCはヨウ素取り込み能力を維持しているため、ヨウ素131療法が残存する微小病変の根絶に有効である。従来の治療に抵抗性を示す少数の患者には、外部照射およびマルチキナーゼ阻害薬が有効である。累積再発リスクが20年で約20%あるため、長期のフォローアップが不可欠である。

予後

ほとんどの患者で予後は一般に良好であるが、約5%は死に至る。年齢55歳未満および腫瘍径4 cm未満に良好な予後との関連が認められる。遠隔転移、甲状腺未分化癌への進行(時折)、およびTERTプロモーター変異に加えて活性化V600EBRAF変異または活性化RAS変異を有する腫瘍に不良な予後との関連が認められる。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Carl MALCHOFF
日本語翻訳版の監訳
赤水 尚史(IRUD臨床専門分科会 内分泌代謝 チーフ /医療法人神甲会 隈病院 副院長)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Differentiated_thyroid_carcinoma_JP_ja_PRO_ORPHA146.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/146

最終更新日:2020年6月
翻訳日:2022年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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