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ぜんしんせいかるにちんけっそんしょう
全身性カルニチン欠損症Organic cation transporter 2 (OCTN2) deficiency, Carnitine uptake defect

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類3
脂肪酸代謝異常症
細分類40
全身性カルニチン欠損症

病気・治療解説

概要

カルニチンはパルミチン酸(C16)に代表される長鎖脂肪酸をミトコンドリア内へ取り込むための輸送体として働く.全身性カルニチン欠乏症は細胞膜上に局在するカルニチントランスポーター (OCTN2)の機能低下が原因で,細胞内カルニチンが欠乏し,結果として長鎖脂肪酸代謝が障害される

疫学

タンデムマスによる新生児パイロットスクリーニングからはおよそ25万人に1人と推定される1)。

病因

細胞膜上のカルニチン輸送蛋白であるorganic cation/carnitine transporter novel type2(OCTN2)の機能低下により低カルニチン血症を引き起こす先天代謝異常症である。常染色体劣性の遺伝形式をとり、カルニチン欠乏により脂肪酸β酸化の阻害、ケトン体生成障害が起き、低ケトン性低血糖、筋力低下、また急性脳症や突然死に至る例もある。

症状

低血糖症状・急性脳症として発症する場合と心筋症として発症する場合がある。前者は感染や飢餓が契機となる事が多い.好発時期は5ヶ月頃から4歳頃が多く,急激な発症形態から急性脳症やライ様症候群と臨床診断されることも多い.後者は,拡張性・肥大性心筋症のいずれの臨床像もとりうる。1歳以降に発症する事が多く,心筋症に引き続き致死的不整脈も報告されている。学童期以降にも,ミオパチー症状や筋力低下,心筋症状,易疲労性,持久力低下などを契機に診断される症例がある.その他,まれな症状として貧血や近位筋の筋力低下,発達遅滞,心電図異常などを契機として診断された症例も存在する.

診断

『診断の手引き』参照

治療

診断時に症状を有する症例はもちろん,無症状で診断された症例についても原則としてはレボカルニチンの大量投与(100-400 mg/kg/day 分4投与(乳幼児),もしくは分3投与(成人))が推奨される.本患者ではカルニチンを大量投与しても血中遊離カルニチン値は正常下限かそれ以下にとどまることが多いため、定期的な遊離カルニチンのチェックが必要である。

予後

最重症の生命予後は不良である。乳幼児期の間欠発作において突然死を呈することもあるが、急性発作による中枢神経後遺症がない限り、正常発達することが期待できる。

成人期以降

成人未治療例での若年性心筋梗塞や致死的不整脈なども報告されており,前述のとおり原則として治療が望ましい.一方,無治療成人例の自然歴などは明らかでなく,十分なエビデンスは得られていない.

参考文献

1) 重松陽介, タンデムマス診断精度向上・維持,対象疾患設定に関する研究, in 厚生労働科学研究費補助金 (子ども家庭総合研究事業) 総合研究報告書(研究代表者 山口清次). 2012. p. 27-31.
2) 大浦敏博, 全身性カルニチン欠乏症とカルニチン療法. 小児科, 1999. 40(9): p. 1042-1048.
3) 小林弘典ら, 【先天代謝異常症候群(第2版)(上)-病因・病態研究,診断・治療の進歩-】 有機酸・脂肪酸代謝異常 ミトコンドリア脂肪酸β酸化異常 カルニチン回路欠損症 全身性カルニチン欠乏症. 日本臨床, 2012. 別冊(先天代謝異常症候群(上)): p. 505-509.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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