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にゅうとうふたいしょう
乳糖不耐症lactose intolerance

小児慢性疾患分類

疾患群12
慢性消化器疾患
大分類1
難治性下痢症
細分類1
乳糖不耐症

病気・治療解説

概要

乳糖不耐症とは、ミルクに含まれる糖質である乳糖をグルコースとガラクトースに分解する乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が低下しているために、乳糖を消化吸収できず、著しい下痢や体重増加不良をきたす疾患である。ラクターゼ活性低下の原因には、先天性の酵素欠損と二次性の酵素活性低下がある。ただし、哺乳類では生後一定期間ラクターゼ活性は非常に高く、授乳期を過ぎると活性が生理的に低下する。また、感染性腸炎などによる二次的なラクターゼ活性低下は原則として生理的活性レベルに回復するため、ここで述べる乳糖不耐症は新生児・乳児早期に発症する先天的なラクターゼ活性低下に基づく病態をさす。

疫学

先天性の乳糖不耐症はまれであり、本邦でも海外でも正確な疫学は不詳であるが、最も高頻度とされるフィンランドでも60,000出生に1人とされている。

病因

先天性の乳糖不耐症はラクターゼの構造遺伝子であるLCT遺伝子の異常によって引き起こされる。LCT遺伝子の変異によってラクターゼ活性が障害された患児では、母乳やミルクに多量に含まれる乳糖を分解・吸収することができない。消化されずに大腸に流れ込んだ乳糖は激しい水様下痢(浸透圧性下痢)と大腸内での腸内細菌による乳糖の発酵のため、著しい腹部膨満や腹鳴をきたす。
なお、LCT遺伝子の発現はMCM6遺伝子と呼ばれる調節遺伝子の制御を受けており、通常はこの遺伝子の働きによって離乳期を過ぎるとLCT遺伝子からのラクターゼ産生が徐々に低下し、幼児期以降には乳児期以前に比して相対的に乳糖の消化吸収能力が低下する。このことは後天性、二次性の乳糖不耐症の成因と関係している。

症状

乳糖不耐症では、新生児期あるいは乳児早期に、哺乳後数時間ないし数日で著しい下痢を呈することで発症する。症状の発現時期や程度は残存ラクターゼ活性の程度による。ラクターゼ活性は加齢とともにさらに低下し、少量の乳糖(を含む食品)の摂取で著しい水様下痢と腹鳴、腹部膨満を呈するようになる。時に反復性の痙性腹痛を伴う場合がある。乳糖の摂取を中止することによって下痢や腹部症状は数時間から1日程度で治まる。

診断

新生児期ないし乳児早期に出現する上記症状があり、乳糖の除去(無乳糖ミルクの投与)によって症状の改善が確認される場合に本症が疑われる。便の生化学的検査ではpH<5.5、便中Na+<70 mEq/Lである。経口乳糖負荷試験で腹部症状を呈し、血糖値の上昇が20 mg/dL未満であり、呼気中水素ガス濃度が20 ppm以上上昇となる。グルコース・ガラクトース吸収不全症を否定するために経口ブドウ糖負荷試験でブドウ糖吸収が正常であることを確認することが望ましい。

治療と予後

新生児・乳児期においては、母乳やレギュラーミルクの摂取を中止して無乳糖ミルクに切り替える。離乳期以降も乳糖、乳製品の摂取を禁止する。β-ガラクトシダーゼ製剤(ガランターゼ®、オリザチーム®、ミルラクト®)がラクターゼ活性を補助するが、先天性乳糖不耐症に対しては酵素活性が不十分で効果が低い。米国などで販売されているLactaid®(個人輸入が可能)は高活性で本疾患でも乳製品の摂取前に服用することで症状の発現を抑制することができる。本症は乳糖除去食や酵素製剤の併用によって日常生活への障害度は低く、生命予後は良好であるが、ラクターゼ活性が回復することは期待できない。

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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