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にゅうじしんけいじくさくじすとろふぃー
乳児神経軸索ジストロフィーinfantile neuroaxonal dystrophy; INAD

小児慢性疾患分類

疾患群11
神経・筋疾患
大分類30
脳の鉄沈着を伴う神経変性疾患
細分類85
乳児神経軸索ジストロフィー

病気・治療解説

概要

第22番染色体長腕上にあるPhospholipase A2, group VI (PLA2G6) 遺伝子の変異による常染色体劣性遺伝性疾患。脳内鉄沈着を伴う神経変性症 (neurodegeneration with brain iron accumulation; NBIA)の一つである。

神経病理

軸索の腫大によるspheroidが中枢及び末梢神経系に広範に出現。淡蒼球・黒質への鉄沈着と、小脳皮質の神経細胞脱落及びグリオーシスも特徴とする。さらに最近、α-synuclein蓄積によるLewy小体と、tau蓄積による神経原線維変化を広範に認めることが報告された。PLA2G6遺伝子にコードされるcalcium-independent phospholipase A2は、細胞膜の恒常性維持に主要な働きをする酵素であり、この機能低下により、細胞膜の軸索内輸送が障害されて膜が軸索末端に蓄積し、神経障害をきたすと推定される

症状

乳児早期までの発達は正常である。1-2歳から精神運動発達の退行を認め、体幹の低緊張、四肢の痙性、嚥下障害、小脳性失調、ジストニアを生じる。しばしば感染を契機に発症・増悪する。眼症状として、眼振、斜視、視神経萎縮を認める。また末梢神経障害を認める。てんかん発作は1/3程度の症例に認められる。最近、PLA2G6遺伝子の変異により、より発症が遅く進行の緩徐なatypical formや、若年発症のdystonia-parkinsonismも生じうることが明らかになった

検査所見

一般採血や髄液に特異的な所見はない。頭部MRIが最も特徴的で、小脳皮質が萎縮して、T2及びFLAIR強調画像で高信号域を示す。淡蒼球・黒質への鉄沈着も認められるが、この所見は発症時には明らかでなく遅れて出現する。その他、大脳白質変性の所見や脳梁膨大部のひ薄化及び変形が報告される。脳波では広汎性の高振幅速波群発を特徴とする。また視神経萎縮を反映してVEPは遅延ないし消失する。末梢神経伝導検査にて軸索型の感覚運動神経障害の所見が認められ、針筋電図では脱神経電位が見られる

診断

臨床症状と画像を中心とする検査所見から本疾患を考える。MRIにて小脳萎縮と淡蒼球の鉄沈着が認められた場合には本疾患が強く示唆される。確定診断には、かつては皮膚・直腸粘膜・結膜・腓腹神経の生検が行われ、末梢神経内のaxonal spheroidsの検出が必要とされた。現在はPLA2G6遺伝子解析により診断が確定する。ただし変異の検出されない可能性もあることに注意が必要である

治療

現在根本的な治療法はない

予後

症状は急速進行性で神経学的予後は不良である

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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