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HTLV-1関連脊髄症HTLV-1-associated myelopathy

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HTLV-1関連脊髄症

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HAM患者を対象としたステロイド第IIb相臨床試験2017・10・11

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HAM患者を対象としたステロイド第IIb相臨床試験(Non progressor)2017・10・11

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HAM患者を対象としたステロイド第IIb相臨床試験(Slow progressor)2017・10・11

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HAM患者を対象とした診断・治療の実態およびその経過に関する観察研究2017・07・27

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HTLV-1関連脊髄症(HAM)の有効性評価指標に関する前向き多施設共同臨床研究2015・07・22

病気・治療解説

概要

成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであるヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)感染者の一部に、進行性の両下肢麻痺、排尿排便障害を示す患者さんがいることにより日本で発見された疾患です。HTLV-1というウイルスはヒトのリンパ球に潜在感染しており、母親から子への母乳を介して、あるいは性交渉を介して伝搬するウイルスです。感染者は全国に約108万人といわれますが、その大多数はHTLV-1による病気を起こすことなく、健康に過ごしています。しかし、一部の人では脊髄に慢性の炎症がおこり脊髄が傷害されるために、両下肢のつっぱり感、歩行困難、しびれ感、排尿困難や便秘で発症し、次第に進行します。ATLとは別の病気で、ATLが脊髄を傷害しているわけではありません。

罹患数

2010年に全国疫学調査がおこなわれ、全国で約3000名の患者がいると推定されています。患者の分布は西日本、特に九州・四国、沖縄に約半数が存在し、ATLの分布とほぼ一致しています。今回の調査で、九州では減少傾向がみられますが、人口の集中する東京や大阪、名古屋などの大都市圏で患者の比率が増加していることが確認されており、全国への拡散傾向が見られます。世界的にみても、HTLV-1感染者、ATLの分布と一致してカリブ海沿岸諸国、南アメリカ、西南アフリカ、南インド、イラン内陸部などに患者の集積が確認されており、それらの地域からの移民を介して、ヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国など、世界的に患者の存在が報告されています。

疫学

血液検査でHTLV-1抗体陽性者、すなわちHTLV-1に感染している人に発症しますが、そのすべてが発症するわけではありません。1987-1988年に実施された全国調査をもとに計算された、抗体陽性者が生涯にHAMを発症する可能性は0.25%、すなわち400人にひとりときわめて低いといえます。一方で、男女比はおよそ1:2-3と女性に多く、複数の遺伝的要因や感染しているウイルスのタイプにより、発症頻度に差があることが明らかになっています。発症は中年以降の成人が多いですが、10代、あるいはそれ以前の発症と考えられる患者も存在します。またHAM患者では体内のウイルス量が非常に増加しており、ウイルス量が上昇している人はHAMになりやすいといえます。

原因

HTLV-1感染が要因で、前述のようにウイルスが体内で増加するとHAMになりやすくなります。しかし、なぜ感染者のごく一部にのみ発症するのか、その機序(原因)はわかっていません。

遺伝

HTLV-1は、主として母親から子への母乳を介して、あるいは性交渉を介して(主に夫から妻への)感染するため、まれに家族内の複数の人に発症することはあります。また、免疫応答に関連する複数の遺伝的要因が発症に関与していることが知られていますので、発症しやすい体質はあるものと思われます。しかし、いわゆる遺伝病ではありません。

症状

自分で気づく症状の第一は、徐々に進行する歩行障害で、まず両下肢のつっぱり感のために足がもつれて歩きにくくなります。また走ると転びやすく、階段の上り下りは、初めは下りにくさを感じます。両下肢の筋力低下が出現すると、特に大腿や腰回りに力が入りにくく、つっぱり感も加わって、すばやいスムーズな動きができなくなります。病気が進むと大腿部が持ち上がらず、階段の上りも困難になります。痙性が強い場合は筋肉の硬直やけいれんを伴い、自分では膝・足関節や股関節を曲げることが困難になります。逆に、チョットした刺激で反射的に関節が屈曲し、転倒の原因になることもあります。歩行障害が進行すると、片手杖、両手杖、さらに車椅子が必要になります。
両下肢の症状と並んで、早期から自覚される症状として排尿障害や便秘があります。頑固な便秘や残便感はあまり病気と関連して自覚されませんが、突然の尿閉や頻尿、繰り返す膀胱炎で泌尿器科を受診し、HAMと診断されることもあります。尿意があってもなかなか出ない排尿困難、全部出し切れずに残った感じがしてまたすぐにトイレに行きたくなる残尿感と頻尿、尿意を感じたら我慢できずに漏れてしまう尿失禁がみられます。
感覚の異常は、下半身の持続するしびれ感や痛みなど、自覚的な症状は発症の早期からよくおこります。時に触覚や温痛覚の低下がみられますが、運動障害に比べて軽度にとどまることが多く、はっきりと感覚の低下を自覚している人は少ないと思います。また自覚的に異常の無い例でも、神経内科の診察で足首部での振動覚低下がしばしばみられます。
自律神経症状は高率にみられ、特に、排尿困難、頻尿、便秘などの膀胱直腸障害は病初期よりみられ、しばしば患者の主な訴えとなります。進行例では起立性低血圧や下半身の発汗障害なども認められ、発汗低下による鬱熱のため、夏場に微熱、倦怠感が続き、適切な室温管理が必要となることもあります。そのほか男性ではインポテンツがしばしばみられます。

治療法

発症メカニズムから考えると、ウイルスの増殖を抑制して脊髄の炎症を抑制できるような抗ウイルス療法が最も理にかなった治療法といえます。しかし、残念ながらこれまでにウイルスの体内での増殖を抑制する薬剤は使える状況にはありません。しかし、いくつかの薬剤が症状を軽減したり進行を遅らせたりする効果があることが報告されています。ステロイド剤の内服により約7割の患者で何らかの治療効果が見られており、治療により髄液の炎症レベルを減少することがわかっています。しかし感染症の誘発、糖尿病の悪化、骨粗鬆症による骨折などトラブルなどが少なからずみられており、長期の連用においては副作用予防のケアが重要で、また中止によりしばしば再燃がみられています。インターフェロンαは有効性が確かめられ、保険適用となっている薬剤です。治療後にウイルス量がやや減少していることがわかっています。しかし、うつ症状や肝障害、白血球減少などの副作用に注意が必要です。
下肢の痙性、すなわちつっぱりに対する対症療法や継続的なリハビリテーションが推奨されます。特にリハビリテーションは大切で、腰回りの筋力増強やアキレス腱の伸張により、歩行の改善が得られます。また、排尿障害や便秘などに対する対症療法も重要で、特に残尿が多い場合は早めに自己導尿を検討することが、腎臓を守るために有効です。

経過

下肢のつっぱり感、歩行時の足のもつれなどで発症することが多いですが、頻尿、尿閉など膀胱直腸障害やしびれ感が初発症状のこともあります。通常は緩徐進行性で慢性に経過しますが、進行が早く数週間で歩行不能になる例もみられ、特に高齢での発症者で進行度が早い傾向があります。また重症な例では両下肢の完全麻痺、体躯の筋力低下による座位障害で寝たきりとなります。一方で、運動障害が軽度のまま長期にわたり症状の進行がほとんどみられない患者もみられます。上肢の完全麻痺や嚥下・発声の障害などを来す例はほとんどみられません。

患者さんに知って欲しいこと

歩行や立ち上がり時の転倒は、大腿骨頸部の骨折などで寝たきりになるきっかけとなります。尿路感染の繰り返しや褥瘡などにも十分注意が必要です。症状の進行を予防し筋力を維持するためにも家庭で定期的にできるリハビリを工夫しましょう。他のHTLV-1関連疾患の併発の可能性もありますので、医療機関への定期的な受診が必要です。

※ 難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/)より、許可をいただき掲載しております。