とうげんびょういちがた糖原病Ⅰ型Glycogen storage disease type I
小児慢性疾患分類
- 疾患群8
- 先天性代謝異常
- 大分類5
- 糖質代謝異常症
- 細分類66
- 糖原病Ⅰ型
病気・治療解説
概要
糖原病I型は、グルコース-6-リン酸を加水分解しグルコースを生成、輸送するグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)機構の障害による疾患で、Ia型 (グルコース-6-ホスファターゼ欠損症)とIb型 (グルコース-6-リン酸 トランスロカーゼ欠損症)がある。肝臓、腎臓、腸管に多量のグリコーゲンが蓄積し、低血糖と肝腫大が出現する。
疫学
有病率は10万人に1人程度と推測される。糖原病I型は、肝型糖原病の中で、糖原病IX型に次いで有病率が高い。
病因
グルコース-6-リン酸からグルコースを生成する過程では、グルコース-6-リン酸 トランスロカーゼがグルコース-6-リン酸を細胞質から小胞体(ER)に輸送し、さらにERの酵素であるグルコース-6-ホスファターゼがグルコース-6-リン酸からリン酸を除去してグルコースを遊離する。糖原病I型では、主にこの二つの酵素のいずれかの異常により、糖新生とグリコーゲンの分解が障害され、低血糖や肝腫大が生じる。Ia型の原因遺伝子は、G6PCで17q21.31し、Ib型の原因遺伝子は、G6PT1で染色体11q23.3に存在する。糖原病I型は、それぞれの遺伝子のホモ接合または複合ヘテロ接合の変異により発症する。
症状
空腹時の低血糖症状、人形様顔貌、成長障害、肝腫大、出血傾向(鼻出血)。脂質異常症、高尿酸血症Ib型 では顆粒球減少と易感染性が見られる。
診断
治療
血糖やケトーシスを発症する緊急時には、ただちにグルコース静脈内投与を行い、持続点滴に移行する。乳酸を含まない輸液を使用する。代謝性アシドーシスを補正する。低血糖の予防のために、頻回の食事摂取や、必要に応じて夜間の持続注入を行う。糖原病治療用ミルク、非加熱のコーンスターチを投与する。乳酸、果糖、ショ糖、ガラクトースの摂取を制限する。高尿酸血症に対し薬物療法を行う。Ib型の好中球減少症に対し、持続的に好中球減少がある場合にG-CSF投与を行う。
予後
肝型糖原病の中でI型糖原病では、最も著しい低血糖が生じる。低血糖による脳障害が起こりうる。血糖コントロールが良好になると肝腫大、成長障害、鼻出血は改善される。肝腫瘍や腎障害の出現が予後を左右する因子となる。
成人期以降
肝腺腫が出現し、一部は悪性化する。腎機能障害の出現に注意を要する。移植医療の対象になることがある。糖原病Ib型では炎症性腸疾患合併の報告がある。
参考文献
1) Rake JP. et al:Guidelines for management of glycogen storage disease type I Eur J Pediatr 2002;161:S112-119
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。