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はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん
播種性血管内凝固症候群disseminated intravascular coagulation:DIC

小児慢性疾患分類

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病気・治療解説

定義

様々な基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化をきたし,MAHAが多発する重篤な病態である.

病因

原因となる基礎疾患は敗血症,悪性腫瘍,手術や外傷などの組織損傷,動脈瘤や血管炎などの血管性病変,産科疾患,全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)を引き起こす疾患など多岐にわたる.これら基礎疾患により,組織因子の過剰発現や血管内皮細胞障害を原因として発症する.

疫学

1992年に行われた,内科,外科,小児科,産婦人科を対象とした厚生労働省研究班全国調査では,患者123,231例に対してDICの発現は1,286 例(約1%)にみられた.1998年の厚生労働省の調査では,絶対数が多いDICの基礎疾患は敗血症,ショック,非ホジキンリンパ腫などであり,DIC発症頻度の高い基礎疾患は急性前骨髄球性白血病(APL),劇症肝炎,前置胎盤などであった.

臨床症状

凝固系と線溶系のバランスによりDICの病態は大きく異なり,「線溶抑制型DIC」,「線溶亢進型DIC」,「線溶均衡型DIC」の3型に分類される.
「線溶抑制型DIC」の代表例は敗血症に伴うDICで,炎症による臓器障害以外に,plasminogen activator inhibitor‒I(PAI-I)が著増し,虚血性臓器症状が出現しやすい.重症例では多臓器不全が進行し,予後は極めて不良となる.
「線溶均衡型DIC」の代表例は固形癌であり,凝固活性化に見合うバランスのとれた線溶活性化がみられる.代償がとれていれば“一見,無症状”に見えるが,血栓症状が進行すれば,血小板・凝固因子の消費が進み出血傾向を来す.この時期には線溶活性化も出血症状を助長する.
「線溶亢進型DIC」の代表例にはplasminogen activator(PA)を産生する腫瘍(前立腺癌,肺癌など),annexin IIを高発現するAPL,tissue-type plasminogen activator(t-PA)の分泌異常を呈するKasabach-Merritt症候群,その他動脈瘤などがある.出血症状は高度であるものの臓器症状は比較的見られにくいのが特徴であるが,出血症状のコントロールのため線溶活性化の適度な制御が必要な場合もある.

診断

(小児慢性特定疾病の対象疾患ではありません)

治療

DICの原因となる基礎疾患の治療を行うことは当然のことながら必須である.
DICに特化した治療としては抗凝固療法が勧められる.ヘパリン(未分化ヘパリン,低分子ヘパリン,ダナパロイドナトリウム),合成プロテアーゼ阻害剤(メシル酸ガベキサート,メシル酸ナファモスタット),生理的プロテアーゼインヒビター(アンチトロンビン)などが投与される.近年,本邦で新たに開発されたリコンビナントトロンボモジュリン(rTM)が,未分化ヘパリンに対し有意なDICの改善および出血症状の改善を示したことで注目されている.
著明な線溶活性化を伴ったDICに対する抗線溶療法(トラネキサム酸とイプシロンアミノカプロン酸)は全身性血栓症の誘発や突然死のリスクを高めるため,安易に投与してはならない.線溶療法(t-PA,ウロキナーゼ型PA)も,致命的な出血(脳出血など)の副作用が報告されており推奨はされていない.
輸血に関しては,輸血基準を満たす場合に限り新鮮凍結血漿や血小板輸血が考慮されうる.

予後

DICは急性期に適切な対処が必要であり,一旦DICを発症すると厚生労働省の診断基準では42.4%,急性期DIC診断基準では35.6%の死亡率が報告されている.

参考文献

1.朝倉英策.DICの分類.Thrombosis Medicine.2011; 1: 38-44.
2.日本血栓止血学会学術標準化委員会DIC部会.科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC 治療のエキスパートコンセンサス.血栓止血誌.2009; 20: 77-113.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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