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しゅうきせいおうとしょうこうぐん
周期性嘔吐症候群Cyclic Vomiting Syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群12
慢性消化器疾患
大分類3
周期性嘔吐症候群
細分類13
周期性嘔吐症候群

病気・治療解説

概要

周期性嘔吐症候群(cyclic vomiting syndrome,CVS)は数日間の嘔吐発作を周期的にくり返すが,間欠期は正常であること, 数年の経過により自然治癒することを特徴とする.CVSは全ての人種で見られ,頻度は白人で2%との報告がある.Liらは小児の発症年齢は中央値が4.8歳で最小発症年齢は生後6日,成人の発症年齢の中央値は35歳で最高齢は73歳であり,性差は小児で57:43(女:男),成人では9:8(女:男)と報告している1).

病態

嘔吐はピーク時に6回/時間,76%に胆汁性嘔吐,34%に血性嘔吐が認められる.全身症状としては93%に嗜眠, 91%に蒼白, 30%に発熱, 27%流涎が,消化器症状としては82%に吐き気,81%に腹痛,81%に食欲不振,79%に嘔気,30%に下痢が,神経学的症状としては42%に頭痛, 38%に羞明, 30%に聴覚過敏, 26%にめまいが認められる1).発作を引き起こす誘因としては精神的ストレス(47%),感染(31%),疲労(24%),食事性(23%),月経(22%)などがあり,76%に一つ以上の引き金が特定される.自然歴は3.6年持続,28%が片頭痛に移行する.合併症としては二次性食道炎,脱出胃症がある1).CVSの病態生理は明らかではないが,ミトコンドリアのエネルギー産生系異常,脂肪酸酸化障害,内分泌異常,自立神経障害,消化管運動異常,心身症など多方面から検討されている.また,CVSは片頭痛に関連した疾患とも考えられている.2003年の国際頭痛学会分類2)で周期性嘔吐症は小児に発症する「片頭痛の1つとして位置づけられ,片頭痛に移行することが多いもの」の一つとして分類されている.少なくとも心理的または身体的な種々のストレスや緊張によって,脳・消化管相互関連系が過剰に反応することは確かである.

診断

決め手となる検査はなく,臨床経過と嘔吐発作の特徴および器質的疾患の否定後に診断される.重症例では器質的疾患の鑑別のために一般血液生化学検査, 血液ガス分析,乳酸,ピルビン酸,アンモニア,アミノ酸分析,尿中有機酸分析,頭部CT,MRI,上部消化管造影,脳波検査などが必要となる1)).

治療

嘔吐発作時の治療と予防に分けられる.CVSに標準的な治療はなく輸液や制吐剤以外は保険適応外となる治療法が試みられている3).

予後

家族には軽症例であれば発症後2~5年程度で自然軽快することの多い予後良好な疾患であると説明する.重症例では,まれに成人期まで症状の残る症例や,片頭痛に移行する症例もあり,長期の経過観察が必要である可能性を説明する1).

参考文献

1) Li BU, Misiewicz L: Cyclic vomiting syndrome: a brain-gut disorder. Gastroenterol Clin North Am 2003;32:997-1019.
2) Headache Classification Subcommittee of the International Headache Society: The International Classification of Headache Disorders: 2nd edition. Cephalalgia 2004;24(suppl):1-160.
3) 疋田敏之: 脳と発達 2011;43:S109.

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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