腸内の「かき混ぜ(ぜん動)」が栄養吸収の鍵に
東北大学と科学技術振興機構(JST)は2月5日、腸内の「かき混ぜ」運動が栄養吸収を左右することを発表しました。
栄養が腸から吸収されるためには、栄養分子が腸壁の近くまで運ばれ、そこで取り込まれる必要があります。これまで、腸は自ら動く「ぜん動」によって内容物を混ぜたり流したりし、内容物の運ばれ方を調整していると考えられてきましたが、その仕組みと吸収との関係は十分に解明されていませんでした。
今回、研究グループは、体が透明で観察に適したゼブラフィッシュの幼生を用いて実験を行いました。腸の動き、腸内の流れ、そして栄養の吸収を同時に測定し、直接可視化することに成功しました。その結果、腸の「かき混ぜ」が腸内の流れを左右し、栄養が腸壁まで届きやすくなることで、吸収量が変化することが分かりました。また、吸収量は腸内の流れの強さで定量的に説明できることも明らかになりました。
今回の研究では、炎症が起きた際の状態についても調査が行われました。その結果、炎症時には腸のかき混ぜが弱まることで腸内の流れが停滞し、栄養が腸壁に届きにくくなるため、吸収が低下することが示されました。これらの結果から、健康な状態と炎症状態のデータが同じ「腸の動きが生み出すかき混ぜの強さ」という関係で整理できることが明らかになりました。


以上の研究成果より、炎症性腸疾患などで見られる吸収低下を、単なる腸壁の機能の問題としてだけでなく、腸内での「流れ」の弱まりとして捉え直し、定量的に説明できる道筋が示されました。将来的には、疾患時の栄養吸収低下の理解を深めるとともに、栄養素や薬剤をどのように腸に届け、吸収されやすくするのかを考える上での設計指針につながると期待されます。
なお、同研究の成果は、流体科学分野の専門誌「Physics of Fluids」オンライン版に2月3日付で掲載されました。
