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開発中の薬剤ネランドミラスト、特発性肺線維症(IPF)および進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)/進行性肺線維症(PPF)における呼吸機能の低下を抑制

独ベーリンガーインゲルハイム社は5月19日、第3相FIBRONEER-IPF試験およびFIBRONEER-ILD試験の詳細な結果を発表しました。

肺が硬くなる線維化を特徴とする間質性肺疾患(ILD)には200以上の疾患が含まれ、その中でも特発性肺線維症(IPF)は最も患者数の多い疾患です。また、特発性肺線維症(IPF)以外の間質性肺疾患(ILD)であっても、肺の線維化が進行する病態は進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)または進行性肺線維症(PPF)と呼ばれ、ともに予後不良な難病とされています。これらの疾患では、肺機能が不可逆的に低下し、労作時の息切れや長引く空咳といった症状が現れ、生活の質が著しく損なわれます。既存の治療薬はありますが、疾患の進行を十分に抑制できない場合も多く、新たな治療選択肢が求められています。

ネランドミラストは、開発中の経口の優先的ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害剤であり、特発性肺線維症(IPF)および進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)/進行性肺線維症(PPF)の治療薬候補として研究が進められています。治験段階の薬剤であり、まだ製造販売承認を取得していません。

今回の発表は、特発性肺線維症(IPF)患者さんを対象としたFIBRONEER™-IPF試験と、間質性肺疾患(PF-ILD)/進行性肺線維症(PPF)患者さんを対象としたFIBRONEER-ILD試験という2つの試験結果を統合したものです。両試験の目的は、既存の治療薬の有無にかかわらず、ネランドミラストの有効性と安全性を評価することでした。主要評価項目は、52週時点での努力肺活量(FVC)のベースラインからの変化量で、肺機能の低下抑制効果を測る指標です。

FIBRONEER-IPF試験では、ネランドミラスト投与群はプラセボ群と比較して、52週間にわたるFVCの低下を有意に抑制しました。FIBRONEER-ILD試験においても同様に、ネランドミラスト投与群でプラセボ群に対する有意な肺機能低下の抑制が示されました。安全性プロファイルについては、これまでの臨床試験で認められていたものと一貫しており、新たな懸念は示されませんでした。

FIBRONEER-IPF試験では、有害事象により治験薬の投与中止につながった割合は、プラセボ群で10.7%に対し、ネランドミラスト9mg群で11.7%、ネランドミラスト18mg群で14.0%でした。FIBRONEER-ILD試験では、有害事象によって治験薬の投与中止につながった割合は、プラセボ群で10.2%に対し、ネランドミラスト9mg群で8.1%、ネランドミラスト18mg群で10.0%でした。どちらの試験でも、ネランドミラスト群とプラセボ群の間で、血管炎、うつ病、自殺念慮、薬剤性肝障害などの有害事象の発現割合に新たな知見はありませんでした。

以上の研究成果は、ネランドミラストが特発性肺線維症(IPF)および間質性肺疾患(PF-ILD)/進行性肺線維症(PPF)という、アンメットメディカルニーズの高い疾患領域において、新たな治療薬となる可能性を示唆するものです。ベーリンガーインゲルハイムは、これらの試験結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)をはじめとする世界各国の規制当局に対し、新薬承認申請を行う予定です。

なお、同研究の成果は、「New England Journal of Medicine」に掲載され、米国胸部学会(ATS)2025にて、Late Breaking Abstract(LBA)として発表されました。

出典
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

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