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ミトコンドリアを活性化させる化合物を発見

理化学研究所(理研)をはじめとする研究グループは、機能低下したミトコンドリアの呼吸を活性化する物質として解糖系酵素であるホスホフルクトキナーゼ(PFK1)を阻害する化合物tryptolinamideを発見したと発表しました。本研究結果によりミトコンドリア病の新規治療法の開発に繋がると期待されています。


ミトコンドリアは全身の細胞内に存在する細胞小器官であり、エネルギーを産生しています。ミトコンドリアの活性が低下するとエネルギーの産生が低下するため、筋肉や神経の細胞活動が悪くなり全身に様々な症状があらわれることに加え、解糖系からのエネルギーに依存するため乳酸アシドーシスにも繋がります。ミトコンドリア呼吸が不完全なまま呼吸反応の一部だけを活性化すると活性酸素が発生し細胞毒性を持つ可能性があります。現在までにミトコンドリア病の治療法は確立されていません。

研究グループはミトコンドリア病患者体内で起こっているエネルギー代謝のバランスに着目し、この代謝バランスを正常に近づける化合物を探索しました。探索にはミトコンドリア病と同様に解糖系依存的なエネルギー代謝を行っているがん細胞を用いました。理研NPDepo化合物ライブラリーの中から条件に合致する化合物を探索した結果、活性化合物が見つかり「tryptolinamide(TLAM)」と名付けました。生化学的な解析の結果、TLAMはAMP活性化プロテインキナーゼの活性化を介した脂肪酸分解によりミトコンドリア呼吸を活性化していました。本研究により明らかになった解糖系酵素ホスホフルクトキナーゼ(PFK1)の阻害によりミトコンドリア呼吸の活性低下を改善できるという結果は極めて重要な知見です。ミトコンドリアの機能低下を改善する方法が確立されるとミトコンドリア病以外の老化やがん、神経変性疾患を含む様々な疾患の改善にも繋がると期待されています。

出典元
https://www.riken.jp/press/2020/20201110_1/index.html

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