二次性進行型多発性硬化症を対象とした国内初の治療薬承認
ノバルティス ファーマ株式会社は6月29日、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)対象の初めてとなる治療薬「メーゼント®錠0.25mg、2mg」(一般名:シポニモドフマル酸)の製造販売承認を取得したことを発表しました。メーゼント錠は1日1回で効果のある経口内服薬です。多発性硬化症(MS 指定難病13)の発症は20歳代~30歳代の女性で多く、一定割合の患者がSPMSに進行すると推定されています。
新規薬剤の作用機序
スフィンゴシンキナーゼ1(SphK1)と呼ばれるタンパク質は、細胞の増殖と生存を促進しています。また、SphK1により産生が調整されるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)は特に血管や免疫機能に働きかけることが知られています。S1Pが情報を届けるためにはS1P1からS1P5までの5種類の受容体のいずれかに結合する必要がありますが、「メーゼント®錠0.25mg、2mg(以下メーゼント)」(一般名:シポニモドフマル酸)はこのうち、S1P1とS1P5受容体にのみ結合し、SphK1とこれらの受容体との結合を阻害します。メーゼントがS1P1受容体に作用すると、リンパ球が中枢神経系へ移動することが妨げられ、中枢神経系での自己免疫による炎症が抑えられます。一方、メーゼントが中枢神経系のS1P5受容体に作用すると、ミエリンの再形成を促進する作用と神経を保護する作用があると期待されています。
メーゼントによる症状進行の抑制効果
承認申請に先立って実施された国際共同第Ⅲ相臨床試験(EXPAND試験)は、1,645人の二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者を対象に実施されました。3カ月間持続するような障害の進行がみられるまでの期間を計った結果、メーゼントを投与した群はプラセボ(偽薬を投与した)群と比較して、症状が進行するリスクが低下し、障害の進行を遅らせる効果が認められました。また、プラセボ群と比較して、メーゼント投与群は年間再発率が55.5%低下したことも示されています。
一定の患者では二次性進行型多発性硬化症への進行がみられる
身体の中で情報を伝達している神経細胞は、神経細胞の周りを取り囲む髄鞘により働きを保護されています。多発性硬化症(MS)ではこの髄鞘が自己免疫により攻撃を受けて破壊されるので、脱髄疾患と呼ばれます。多発性硬化症は女性に多く、国内の患者数は約1万5000人程度と推定されています。発症初期は症状が現れる期間(再発期)と症状のおちつく期間(寛解期)が繰り返します。これを再発寛解型MS(RRMS)と呼びます。RRMSの約半数の患者は再発の有無にかかわらず症状が進行する二次性進行型多発性硬化症(SPMS)に移行します。