制御性T細胞を誘導する抗原提示エクソソームの開発に成功
金沢大学は12月18日、細胞から分泌される微小な膜小胞「エクソソーム/細胞外小胞(EVs)」を人工的に改変し、疾患関連抗原に特異的な制御性T細胞(Treg)を誘導する「抗原提示エクソソーム(AP-EV-Treg)」の開発に成功したと発表しました。
私たちの体には、ウイルスなどの外敵から身を守る免疫システムが備わっていますが、このシステムが誤って自分自身の正常な細胞を攻撃してしまうことがあり、自己免疫疾患と呼ばれています。これまでの治療では、ステロイド剤などの免疫抑制剤が使われてきましたが、これらは免疫の働きを全体的に抑えてしまうため、感染症にかかりやすくなったり、がんのリスクが高まったりするという副作用が課題でした。
今回、研究グループは、細胞から分泌される「エクソソーム」と呼ばれる微小なカプセルに着目。このカプセルの表面に、特定の抗原(免疫の標的となる物質)と、免疫細胞に働きかける「IL-2」および「TGF-β」という分子を同時に提示できるよう人工的な改変を加え、「抗原提示エクソソーム(AP-EV-Treg)」を開発しました。Tregは、過剰な免疫反応にブレーキをかける役割を持つ細胞です。開発された改変エクソソームをマウスに投与したところ、特定の抗原に反応するT細胞だけが選択的に刺激され、強力なブレーキ機能を持つTregへと変化することが確認されました。さらに、免疫の働きを調整する既存の薬剤であるラパマイシンと併用することで、その誘導効果がより高まることも実証されました。

この技術の特徴は、体外で細胞を培養して戻すのではなく、体の中にある細胞を、病気を抑える細胞へと直接転換させる点にあります。これにより、全身の免疫力は保ったまま、病気の原因となる箇所だけに作用する精密な治療が可能になると考えられます。
以上の研究成果より、抗原特異的 Treg を誘導するために、分子構成を自由に組み替え可能なモジュール型エクソソームプラットフォームを開発し、自己免疫疾患およびアレルギー疾患に対する新しい免疫制御療法の可能性が示されました。
なお、同研究の成果は、国際学術誌「Drug Delivery」オンライン版に掲載されました。
