【米】新生児スクリーニング(NBS)パネルに異染性白質ジストロフィー(MLD)が追加
協和キリングループの英Orchard Therapeutics社は12月17日、米国推奨統一スクリーニングパネル(RUSP:Recommended Uniform Screening Panel)に異染性白質ジストロフィー(MLD)が追加されたと発表しました。
異染性白質ジストロフィー(MLD)は出生10万人に約1人の割合で発症すると推定される、非常に稀で重篤な遺伝性の代謝性疾患です。遺伝子の異常により神経障害や発達の退行が引き起こされ、最も重症なタイプでは乳児期後半に急速に歩行や会話能力を失い、多くが症状発現から5年以内に亡くなるとされています。
RUSPは連邦政府が全ての新生児に対して出生時に検査を推奨する疾患リストを含むガイドラインであり、米国の各州はこれを参考にして自州の新生児スクリーニングパネルに含める疾患を決定します。米国では約500人に1人の新生児がNBSによって診断可能な疾患を持っており、年間8,000人以上の乳児がこの公衆衛生プログラムによって救命的治療を受けられる可能性があるといいます。
Orchard Therapeutics社の最高経営責任者であり医師のボビー・ガスパー氏はプレスリリースにて、「新生児スクリーニングは、症状が発現する前に患者を診断できる唯一の現実的手段であり、この急速に進行し、不可逆的で最終的には致命的な疾患に苦しむ米国の子どもとその家族に、最適かつ公平な結果をもたらすための鍵となります。MLD を出生時にスクリーニングすることの大きくかつ緊急の医療ニーズを認識した米国保健福祉省のリーダーシップに敬意を表します」と述べています。
また、米国アリゾナ州の異染性白質ジストロフィー(MLD)支援者であるケンドラ・ライリー氏は、「MLDの新生児スクリーニングが重要なのは、症状発現前に診断されなかった場合、治療対象外となってしまう可能性があるためです。私の次女リビーもその例で、現在この重篤な疾患の終末期をホスピスで過ごしています。リビーの診断を受けて、末娘ケイラは兄弟姉妹鑑定により症状発現前にMLDと診断され、迅速な医療介入を受けられました。私たち家族のような経験は今でもあまりにも多くあります。しかしMLDの新生児スクリーニングが普及することで、未来の世代は『一人の子を失って、もう一人を救う』という状況を回避できるでしょう。出生時にMLDを診断できる新生児スクリーニングと、治療を提供可能な体制が組み合わされることで、この疾患に直面する子どもや家族の運命を大きく変えることができます」と述べています。
米シカゴのAnn & Robert H. Lurie小児病院Edwards Family Division of Genetics and Rare DiseasesのBarbara Burton医師は、「多くの稀で命に関わる疾患と同様、早期発見と診断が患者の最良の結果を確保する鍵です。治療を受けた子どもと受けなかった子どもで結果の差を直接見てきました。MLD患者には意味のある人生を送れる最良の機会を与えるべきであり、それは普遍的な新生児スクリーニングによってのみ可能です」と述べています。
なお、米国では2024年、早期発症型MLDと総称される臨床所見発現前の後期乳児型(PSLI)、臨床所見発現前の早期若年型(PSEJ)、及び臨床所見発現後早期の早期若年型(ESEJ)異染性白質ジストロフィー(MLD)に対する治療法を食品医薬品局(FDA)が承認しており、Orchard Therapeutics社が治療法の提供を行っています。
