皮膚エリテマトーデス、自己を攻撃するメカニズムに老化細胞が関与
北海道大学は7月24日、皮膚に慢性的な炎症が生じる自己免疫疾患皮膚エリテマトーデスの病態に「細胞老化」が深く関与している新たなメカニズムを明らかにしたと発表しました。
皮膚エリテマトーデスは皮膚に慢性かつ炎症性の病変が生じる原因不明の自己免疫疾患で、全身性エリテマトーデス(指定難病49、SLE)の症状のひとつとして発症することがあります。
これまで皮膚エリテマトーデスでは、患者さんの皮膚でI型インターフェロンというサイトカインの量が増え、さらに正常な表皮細胞が免疫細胞の一種である細胞傷害性T細胞に攻撃され、細胞死に至ることが分かっていました。しかし、なぜ免疫細胞が自身の正常な細胞を攻撃するのか、その詳しいメカニズムは不明なままでした。
今回、研究グループは、皮膚エリテマトーデス患者さんの皮膚組織を最新技術である単一細胞解析(シングルセルRNA-seq解析)を行いました。その結果、患者さんの表皮細胞が「細胞老化」という状態になっていること、そしてこの老化細胞がI型インターフェロンを多く産生していることを突き止めました。さらに、老化した細胞から分泌されるI型インターフェロンが正常な表皮細胞に作用し、HLA-クラスIというタンパク質の発現を高めることで、細胞傷害性T細胞からの攻撃を受けやすくすることが判明しました。
また、老化細胞自身は、自らが作り出す因子(EGFRリガンド)の働きによってHLA-クラスIの発現を低下させ、細胞傷害性T細胞からの攻撃を巧妙に逃れている可能性があることも示唆されました。このメカニズムの重要性は、全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスに老化細胞除去薬を投与したところ、皮膚の炎症が軽減されたことからも裏付けられているといいます。
以上の研究成果より、老化細胞が皮膚エリテマトーデスにおける免疫細胞による自己攻撃のメカニズムに中心的に関わっている可能性が示されました。この発見は、今後の病気の原因解明や、老化細胞を標的とした新しい治療法の開発に貢献すると期待されます。

なお、同研究の成果は、「Arthritis&Rheumatology」オンライン版に5月19日付で公開されました。