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肺動脈性肺高血圧症治療薬エアウィン、製造販売承認を取得

MSD株式会社は6月24日、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬であるアクチビンシグナル伝達阻害剤「エアウィン(一般名:ソタテルセプト(遺伝子組換え))」について、日本国内での製造販売承認を取得したと発表しました。

肺動脈性肺高血圧症(指定難病86、PAH)とは、心臓から肺へ血液を送る肺動脈の血圧が高くなる疾患です。肺の細い血管が狭くなることで発症し、重症化すると心臓の右心室に負担がかかり、右心不全へと進行する可能性があります。治療せずに放置すると数年以内に命を落とすこともある進行性の疾患です。肺動脈性肺高血圧症(PAH)は厚生労働省が指定する難病であり、2023年度には4,682名の患者さんが認定されており、その数は年々増加傾向にあります。近年、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬開発は進展し、既存薬の併用療法によって治療成績は改善しているものの、いまだ予後には課題が残されており、さらなる治療選択肢が求められていました。

エアウィンは、アクチビンシグナル伝達阻害剤として初めて承認された肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬です。肺動脈性肺高血圧症(PAH)の根本的な病態である肺血管リモデリングを標的とし、主にアクチビンAと結合して細胞増殖を促すアクチビンシグナル伝達を阻害することで、シグナル伝達のバランスを改善し、肺血管平滑筋細胞の増殖を抑え、血行動態を改善する新規の作用メカニズムを持っています。非臨床モデルでは、血管壁の厚さの減少、右心室のリモデリング減少、および血行動態の改善が認められています。同剤は、2024年3月に米国食品医薬品局(FDA)から、同年8月には欧州委員会(EC)から、それぞれ肺動脈性肺高血圧症(PAH)の成人患者さんに対する治療薬として承認を受けています。

今回の製造販売承認は、標準的なバックグラウンド療法を受けている肺動脈性肺高血圧症(PAH)の成人患者さんを対象とした海外の第3相試験であるSTELLAR試験と、日本国内で実施された第3相020試験などの結果に基づいたものです。STELLAR試験では、24週時の6分間歩行距離がプラセボ群と比較して中央値で40.8メートル延長し、運動耐容能の有意な改善が示されました。この試験期間中に報告された主な副作用は、毛細血管拡張症、頭痛、鼻出血、注射部位疼痛、ヘモグロビン増加でした。また、日本人の肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者さんを対象とした020試験では、24週時の肺血管抵抗がベースラインから推定値で-99.2 dynes・sec/cm5減少し、血行動態の改善が認められました。主な副作用としては、ヘモグロビン増加、鼻出血、頭痛、毛細血管拡張症が報告されています。

MSDの白沢博満代表取締役上級副社長執行役員グローバル研究開発本部長はプレスリリースにて、「PAHは依然として予後が不良な進行性の疾患です。『エアウィン』というPAHの病態を標的とする新規作用メカニズムの革新的な治療選択肢の提供を通じて、日本のPAH患者さんに貢献できることを大変嬉しく思います」と述べています。

出典
MSD株式会社 プレスリリース

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